第22話 不安【side 蒼馬】

病室からでた俺たちは、愚痴をこぼした。


「あの男、危険すぎる……」

「だよな〜」

「……」


黎はなんも言わないがこくりと頷いている。その裏に隠れた想像もつかないほど、大きいだろうな……。無口だけど、心優しくて沙音をとても大事に思っているもんな……。


俺も他の人、言えないけど……。


「………あの男、何処か普通じゃなかった……」


かと思えば、珍しく黎が話す。びっくりしたものの同感だからそれどころじゃない。


「ああ、あの鋭く冷たい目つき、あの雰囲気…普通の高校生じゃなかった」

「まあそれを沙音本人は気づいてないみたいだけどな〜」


やはり、三人、考えていることは一緒だったか……。


「「「はあ……」」」


三人一緒に深いため息はついた。


「沙音が可愛すぎるから、普通の学校ではなく有名な進学校に入れば、みんな勉強に集中して大丈夫だと思ったのに……」

「本当だよ〜蒼馬にい……俺もそう思ったんだけどな〜」

「………あんなやつがいるとは思わなかった……」



「「「はあ……」」」


再びため息をつく。


それを見ていた親は可笑しそうに笑った。


「あらあら、三人とも沙音が好きすぎるわね」

「お母さん!そゃそうですよ!あんな妖精のような、可愛くて、頭良くて、優しい妹がいれば誰だってこうなります!!」


お母さんは軽すぎるっ!!


「そこにはお父さんも同感だな。よくあんないい子に育ててくれたよな」

「本当だよ〜。よ〜くこんな兄たちに囲まれてああ育ったのが不思議なぐらい〜」

「……同感」

「はは、お母さんに感謝だな」


本当だよ……。素直すぎて逆に不安……

胃がきりきりと痛んで、胃もたれしそう……


「「「はあ……」」」


また、ため息が揃う。


「あら、またさっきみたいになっちゃたわね」


そんな感じに帰ったのだった。



──病院の自動ドアが閉まる瞬間、ふと誰かの視線を感じた。振り返ったが、そこには誰もいなかった。


誰もいない病室の廊下に、足音だけが残っていた。

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