第6話 気まずさ

今日、一日中、ずっと神牙夜翔を避けていた。


「……お前、ほんとに俺を無視する気か?」と言われ、その声が、耳のすぐ後ろで落ちた気がした。


背筋がゾクリとする。瞬間、全身に冷や汗がじわっと広がるのを感じた。


……そして、視線を向ける勇気なんて、今は持ち合わせてない私は「トイレっ──」と叫んで教室を飛び出した。


いやいや、まず、あんた、昨日「関わるな」って自分で言ったじゃん!?

だからこっちは全力で無視してるのに、なんで今さら声かけてくるの!?


………もう、わかんないって私、明日はどうしよう……。よりにもよって、同じクラスか……。大きなため息が出そうだ。



そんな気まずさを抱えたまま昇降口へ向かうと、チャラ男たちが私に絡んできた。怖くて、体がこわばってしまう。


……また、やなことに巻き込まれちゃった。

学校が違ったらなくなると思ったのに……。


怒ったり、言い返したりするのは苦手で。できればただ静かにしていたいのに。


「ねえ、白城さん、そんなに固まってどうしたの?冗談だよ?」


「ちょっとは笑ってよ。もう少しだけでもさ。」


数人の男子が、沙音の周りにじわじわと近づいてくる。

息が詰まりそう。震えそうになる自分を、必死で押し殺す。


「や、やめてください……」声が震えてしまう。


……帰りたい。ここから、早く離れたいのに。


「さあ、笑ってみてよ?」


男の手が、そっと沙音の肩に向かって来た。肩に触れるっ……思わず身構えた。


その時、背後から低く鋭い声が響いた。

「うるせぇ、そこから離れろ。邪魔だ。」


振り返ると、神牙夜翔が立っている。彼の瞳は夜の闇よりも深くて、冷たく光っていた。

怖いはずなのに、不思議と守られている気がして、胸が少しだけ落ち着く。


チャラ男たちが一瞬で怯えて逃げていくのを見て、私は声も出ずに見送った。


夜翔は無表情で、でもその口調は強気で、俺様って感じだけど……

「……ったく、なんでそんなにビビってんだよ。俺がついてんだから、安心しろって」


その言葉に、気まずさもなくなり、胸のざわつきが少しだけ静まる気がした。


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