武器商人だけど最強です。~倒した魔物で装備作って生きてます~
リンタイラン
第1話 召喚、そして追放
目を開けると、天井が高かった。
金色の紋章が浮かぶドーム状の天蓋。石造りの大広間に、見慣れない服の人間たちがずらりと並んでいた。
「……え? なにこれ、どこ?」
思わず口に出した声が、微妙な反響を返す。
その瞬間、視界の端で、誰かが叫んだ。
「成功です! 三人の召喚に成功しました!」
「おお……これが異世界の、選ばれし者たち……!」
魔法陣の中心には俺を含めて三人の若者。
隣には、いかにも体育会系っぽい男と、クールな美人がいた。
(……はは、マジか。これ、そういうやつか)
俺は普通の社会人。24歳。都内のホームセンター勤務。
昨日も文房具の棚卸ししてたばっかりなんだけど。
「そこのお三方! どうか我が王国を救ってください! 魔王の軍勢が日に日に迫っておるのです!」
王冠をかぶった立派な爺さんが、俺たちに頭を下げた。
……どう考えても、状況が早すぎる。
それでも、王国の魔術師と名乗る人間が「ステータス鑑定」なるものを使って、俺たちに向かって言った。
「この者……勇者職! 剣術適性・極大!」
「こちらは賢者職です! 魔力資質Aランク!」
(うわー、すげぇな。なんかガチャでSSR当たったみたいな空気だ)
「そして……こちらは……え?」
間が空いた。
「ぶ、武器商人、です……」
「戦闘能力、なし……」
あ。
はい、出た。“ハズレ”枠。
「ええい! なんだそれは! 使えんではないか!」
「荷物持ちにもならぬ! こんな者を呼んで、何の意味がある!」
「元の世界に返せ!」
場が一気に冷え込んだ。さっきまでチヤホヤされていた分、冷たさが痛いほど突き刺さった。
……俺も、わかってはいたよ。
勇者とか魔法使いとか、そういう華やかな職業じゃないのは、なんとなく感じてたし。
でも、ここまで露骨にいらないって言われると、さすがに応える。
「……あの、じゃあその……帰り道とか、あるんですかね?」
おずおずと問いかけた俺に、王はしばらく沈黙してから、静かに答えた。
「無関係の者を巻き込んでしまったこと、王として誠に遺憾である。
お主には……せめてもの償いとして、旅の支度金を用意しよう」
差し出された袋には、数十枚の銀貨と、簡単な食糧、そして粗末な旅装。
「……追放、ということですか」
「うむ。“戦えぬ者”を軍に抱える余裕はない。
だが……この世界において生きる選択は、お主自身のものだ」
温情のようで、事務的。
誰も俺の名を尋ねようとしなかった。
そのまま、護衛に導かれて城門の外へ。
何が起きたのか理解できないまま、俺は異世界の地に放り出された。
異世界に放り出され、城門の前の石畳に座り込んだ俺は、ふと不思議な違和感を覚えた。
(……なんか、視界の端に“チカチカ”って光ってる?)
無意識に目を細めると、視界の右上あたりに、うっすらと文字のようなものが浮かんでいた。
(え、これ……UI?)
試しに意識を向けると、“ぴこん”と音がして、青白い光の枠が開いた。
【基本ステータス】
・名前:相澤悠真
・種族:人間
・職業:武器商人 Lv1
・HP:100/100
・MP:10/10
・スキル:武器化
(うわ、マジでゲームのステータス画面じゃん……!)
どうやらこの世界では、“見る”と強く意識することで、ステータスウィンドウが開く仕組みらしい。
「……これは便利だけど、わりと怖いな」
だが、それでもひとつ分かったことがある。
――俺には、戦う力はない。だが、“作る”スキルはある。
戦えない。魔法も使えない。
剣士でも魔導士でもない。
よりによって、“商人”。
だけど、そう書かれている以上、俺は“そういう存在”なんだろう。
「……ああ、そうですか。だったら俺、商人として生きますよ。武器商人として、ね」
強くなれなくてもいい。
ただ、“この世界で生きる”ことは、絶対に諦めない。
俺の異世界生活は、こうして幕を開けた。
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