酒場の噂――昇級選定大会終了後


 テイマーズギルド1階・酒場。

 雑多な喧騒の中に、テイマー達の噂がさざめいている……。




「おい、聞いたか。Eランクのルーキーの噂」


「聞いたぜ聞いたぜ。二重種使いが現れたってな。しかも2人!」


「誰か試合見てたやついねえのかよ?」


「友達の友達が見たって言ってたぜ。ルーキーとは思えねえ、とんでもねえ試合だったってよ!」


「それはヨタだろ。二重種なんているわけねえよ」


「いや、ガチらしい。片方は山のような高さと海のような大きさを合わせ持つスライムドラゴンで……」


「そんなのFランクテイマーがテイムできるわけねえだろ!」


「片方は可愛い女の子だってな」


「そういや最近、ギルドに可愛い子が出入りしてねえか? ほら、あの黒髪の……」


「友達が街の門番やってるんだがよ、1ヶ月くらい前からフーカー牧場の娘さんとよく狩りに出かけていくテイマーがいるって言うんだよ」


「それで?」


「そいつが連れてるチドラが、珍しい鮮やかな青色だったって話でな……もしかすると、そのチドラが……」


「フーカー牧場のお嬢様と最近よく一緒にいる小僧のことなら、俺も聞いたことあるぜ! 確か北にあるネルス村ってところの出身だったはずだ」


「ネルス村? どこのど田舎だよそれ!」


「聞いたことねえなあ……」




 喧騒の中に身を潜めながら、外套を羽織った女が静かに杯を傾けていた。

 女は、喧騒の中から聞こえてきた1つの単語に眉を上げて、誰にともなく呟く。


「……ネルス村……?」


 一般には知られていない、とある重大な事件を。


「……魔王種に、襲撃された村……」

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