第35話
「薬の必要はないわ、私は大会には出ないもの。久しぶりね、ケイア。五年ぶりかしら」
「あ、お久しぶりですリアナさん。なるほど、主都で見かけないと思ったら、別の町を拠点にしていたんですね?」
そこにいたのは、かつて俺と同じ時期に冒険者になったリアナさんだった。
最後に顔を合わせてから五年経っても、一切見た目が変わらないのは、やはりエルフであるからなのだろう。うむ、さすがの俺もここまで変わらないってことはないからな。
「この街に戻っていたっていうのは本当だったのね。それも今回も商人として。聞けば、随分と世話を焼いている新人がいるらしいじゃないの」
「そうだね、俺の里の子でね、赤ん坊の頃からよく面倒を見ていた子なんだ」
「え、あ、そうなの? ああ……世話を焼くってそういう……納得したわ、妹みたいな子なのね」
「そうだなぁ……妹とか娘とか、そんな感じだなぁ」
「ふ、ふーん……きっと可愛い子ね。いいわ、私も今月から拠点、こっちに戻すから私が面倒見てあげる。私実はAランク冒険者になれたのよ? ふふ、西の砦じゃ少しは名が知れているのよ?」
「おお! 凄いな、激戦区のあっちで名前が通るって相当じゃないか」
よく、存じております! 冒険者ルートにおける、頼れる仲間『リアナ』。
闘技大会後から勧誘可能になる仲間で、その性能は回復役や後衛が乏しい冒険者ルートにおいて、これ以上ないくらいお世話になる相手だ。
前衛よし、回復魔法よし、攻撃魔法よしの万能キャラだったのだ。
そうか……本当にそこまで実力を上げたのか……Aランクっていうと、原作より上だぞ。
Aランク冒険者というのは、国が高い報酬を払って、わざわざ騎士団の作戦に同行を頼んだりするような、所謂『客将』のような立ち位置だ。
戦闘力、戦闘技術だけでなく、豊富な知識や作戦遂行能力、そして周囲からの評判もないと至れないランクなのだ。
「貴方昔、私にこんなことを言ったわね。『立派な先輩冒険者になる』って。だからって訳じゃないけど、気が付いたら若い子の指導ばかりしていたわ。そしたらいつのまにかAって訳」
「なるほど……じゃあ、今回は大会に出る訳じゃなくて、純粋に見学に来たと」
「いえ、そういう訳でもないの。ちょっと、ある連中を追っているのよね。暗殺者ギルドって知ってる?」
ピクリと指先に力が入る。
「……一応噂程度には」
「犯罪者の集団だなんて言われてるギルドよ。近頃特定の商人や貴族、有名な傭兵を襲撃することもあると聞くわ。その連中が今回、この祭りに合わせて主都に移動した疑いがあるの。それで警戒の為に私が来たって訳」
「なるほど……こっちの方でも商人ギルドを通して、怪しい商品の動きがないか探ってみるよ」
「助かるわ。ふふ……それにしても、相変わらず立派に商人しているじゃないの。護衛の依頼とか出さないの?」
「んー……簡単な魔物なら自分で倒せるし、それこそ俺が目をかけてる新人冒険者に依頼してあげようと思ったりしているんだよ」
「気が早いわね。護衛の任務なんてBランクからよ? その子今ランクいくつなの?」
「少し前にBになって、今一緒に暮らしているよ」
そうなんです、あっという間にBになったんです。
俺の最短記録、あっという間に抜かされてしまいました。
さすがだぞ! 冒険者のいろはを ばっちり理解しているんだな!
「んな!? どういうことよ、そんなアンタじゃあるまいし……」
「いやー優秀な弟子を持てて鼻が高いよ」
「ふぅん、どんな子なのかしら。紹介して欲しいわ」
ふむ、ここは是非、顔を繋いでおかなければ。
周囲を見渡すと、依頼品の買い取りカウンターに、丁度リヴァとその仲間達一行がいた。
そういえばいつもいろんな人と組んでいるが、今日は結構大所帯だな。
しっかりゲーム時代のフルメンバーと同じ、五人パーティーだ。
「おーい、リヴァ! ちょっとこっちに来てくれないかー!」
「ねぇリヴァリス、なんだかあの商人さん呼んでるよ? 知り合い?」
「ん、美形。リヴァの恋人?」
「はぁ!? リヴァ、お前恋人がいるのかよ!」
「アイツは……」
「え、なに? あ、ケイアだ。今行くー!」
お、シグト君も一緒か。それに……おおう、全員原作キャラクターだ。
出会うのはやはり運命なのか……。
「来たよー! なになに、何か用事?」
「ああ、ちょっと紹介したい人がいてね。こちら、Aランク冒険者のリアナさん。俺の昔の同期なんだ」
リヴァに紹介すると、リアナが何やら面食らった表情で、ぶつぶつ何かつぶやいていた。
なになに……『人間は成長が早い』『立派な大人の女』? まぁそうだが。
そうか、身長もリヴァの方が高いからな。というかリアナは少しだけ背が低いからな。
「おお! Aランク冒険者さんとお話するのは初めてです! 初めまして、リヴァルスと言います! よくリヴァって略されて呼ばれてます!」
「そ、そう。凄いのね、もうBランクなのね?」
「えへへ……先生が良かったからですよー! ね、ケイア!」
「嬉しいこと言ってくれるな。リヴァがしっかり学んだからだよ」
良い子すぎる。ダメだ、人たらしだこの子は。
しかし、なぜリアナさんは顔を引きつらせているのだろうか。
まさか、もう既にリヴァのことを、自分に比肩するかもしれない冒険者として、未来のライバルとして警戒しているとでも言うのだろうか……。
「……ケイア、本当に彼女は妹、娘みたいなものなのよね?」
「うん、そうだね。赤ん坊の頃のお世話もしていたよ」
「……そう」
何故念を入れて来るのか、その真意が分からない。
が、どうやらリヴァを認めたのか、握手を交わしていた。
とその時、またしてもこちらの商業スペースに近づく集団が現れる。
リヴァのパーティーメンバーだな? 早速、その対応へ向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。