第34話 イェーイ!!!アフD!

『ポータルの誤作動!原因は未だ不明。』

『旅行先が強制変更!ポータルの不備とは?』

『V社"アフターフォローはしっかりとする"と公表。』

スマホをスクロールしながら、ワンルーム・ディストピアはため息を吐いた。

「ポータルの不備、ねぇ。」

「こんなこと起こるなんて少し不可解でござるね。」

ベンチの横に座ったINМインムが、ひょいっと画面を覗きこむ。

「各地で混乱広がる…、復旧の目処は未だ立たずだとよ。誕生日パーティーは諦めろ、インム。」

「えぇ!そんな!」

ガックリと項垂れるINМを横目に、同じくベンチに腰掛けていたミンが質問をする。

「なぁ、そもそもポータルって何なんだ?魔法っぽいけど、どこかの魔法少女の固有魔法か?」

「いい線行ってるぞ、ミン。ポータルっていうのは原初の魔法少女の固有魔法を何とか再現したものだ。」

テレビで紹介されていた内容を引っ張り出して思い出すワンルーム・ディストピア。魔法少女関連のニュースなどに興味がないので、かなりうろ覚えだ。

「へぇ、あの原初の魔法少女か!ハイジンみたいに、移動系の固有魔法のも血抜きだったのか?」

「知らん。そもそも、今だってよく分からんまま使ってるんだからよ。」

「へ?」

質問に答えるのが面倒くさくなったのか、クソニートはスマホを見ながら黙りこくってしまう。

惚けているミンに、INМが解説を差し込む。

「原初の魔法少女が行方不明になってしまっているので、原理について詳しく研究出来ないんでござる。」

「いや、成功してるんだから原初の魔法少女が居なくても問題ないんじゃないか?」

「それが…、このポータル達は偶然の産物でござるから再現出来ないんでござるよ。現存するものを解体して調べるわけにもいかないでござるから、どうやって動いているかは不明なんでござる。」

苦笑しながら話すINМの話を聞いたミンは、少し考えた後にこう結論を出した。

「つまりなんだ、よくわからないまま使ってるってことか?」

「そうでござる!」

「安全性とか大丈夫なのかよ、それ!」

ごもっともである。安全確認のマニュアルすらないのに商売として成り立ってしまっているのだから、呆れてしまうのも当然のだ。

「おい、お前ら。飛行機の手配が出来るのは早くても5日後だってよ。」

スマホを見ていたワンルーム・ディストピアが、ぎゃいぎゃいと喋り合う二人に話しかける。

「おいおい、なんでそんなに遅いんだよ?」

「海とか陸とかはダーティニアがいつ襲ってくるか分からねぇから、国家間の物品のやり取りは基本的にはポータル一択なんだよ。でも、今回は天下のポータル様が使えねぇから代わりに飛行機が使われるんだよ。だから、飛行機の便のスケジュールはパンパンってわけだ。」

いくら数十メートルの巨躯を誇る大型ダーティニアとはいえ、1万メートル上空を飛ぶ飛行機には攻撃出来ない。そのため陸路や海路の代わりの移動手段として、空路は重要視されてきた。だが、主要だったのはやはりポータルだ。

しかし、今回はそのポータルが使えなくしてしまったので空路が使用されるのは必然的と言える。

「それじゃあ、宿とか食事とかはどうするんだ?」

「んなもん、ポータル管理会社のV社がどーにかするに決まってんだろ。ちったあ頭使えよ阿呆マスコット。」

「そこまで言う必要ないだろうが!」

罵詈雑言に憤るミンを、INМが宥める。

「まぁまぁ、落ち着くでござるミン殿。食事代も宿代もタダなのでござるから、ちょっとした旅行だと思えばいいでござる。」

「…確かに。ってか、INМはこんなことになってるけど、親御さんに連絡とかしたのか?」

「あぁ、それなら大丈夫でござるよ。」

と、そんな風に話していると疲れた様子のV社の人間が騒動の被害者達に声をかける。

「皆様をホテルまでお送りするバスが到着いたしましたので、バス乗り場にお集まり下さい。」

指示に従い人々が大型バスに乗りきると、ゆっくりとバスが動き出した。

(なんか、修学旅行みてーだな。ま、あん時と違うのはバスに乗ってるのが知らねぇ奴ってことと…、横の席に友達が居るってことか。)

なんとも言えないむず痒い気持ちに襲われるワンルーム・ディストピア。

クソニートが人間的な感情を味わっているのとは対照的に、INМは窓に張り付いて外の景色を食い入るように眺めている。

「ワンディス殿ワンディス殿!見てくだされ!カッコいい建物がたくさんあるでござる!」

「餓鬼かよてめぇは。」

そう言いながらも、ワンルーム・ディストピアも硝子の向こう側を覗く。

「おぉ。こりゃ、…凄いな。」

そこは、まるで童話の国だった。

歴史を感じさせる古い灰色の石畳の道路に、カラフルな三角屋根の家々が立ち並ぶ。鮮やかで小さな花々がそこかしこに飾られており、石の世界を華やかに飾り付ける。

カボチャの馬車が今にも走ってきそうな、そんな御伽噺のような街。

中世の宝石箱という異名が、ピッタリと当てはまる街。

 労働連盟加盟都市"ライヒ"

異国情緒溢れる街が、朝日を浴びながら目を覚ます。

「ふおぉーーー!こんなの、初めて見たでござるっ!」

「テレビとかで見たことはあるが、俺も本物は初めてだ。」

そう言うと幼い少女はにぱっと笑った。

「初めて記念でござるね、ワンディス殿!」

「そーだな。」

こそばゆいのか、ワンルーム・ディストピアはそっけなく返事をした。

ちなみに、ポケットに入っていたミンはこの会話を聞いて涙した。

(ハイジン…!お前にも人の心が残ってたんだな…!やっぱり根は良い奴だよ!)

…既に魔法少女を二人殺しているのに、根は良いなんてことあるのだろうか?

まぁ、人間は変われる生き物なので、これからに期待である。


バスがたどり着いた先には、いかにも高そうな老舗のホテルがそびえ立っていた。古風ながらもどこかモダンな雰囲気が漂うホテルは、一種の芸術作品のようにも見える。こんなホテルを直ぐに手配できたのは、流石は音に聞くV社と言った所だろう。

V社の人間は受付を済ますと、バスから降りた人々をロビーに集めた。

「皆様はこれからこのホテルに泊まっていただきます。食事に関してはビュッフェ会場で何時でも食べられるようになっておりますので、ご都合のつく時間にご利用下さい。お部屋にはお風呂やベッド、トイレ、テレビ、洗濯機などが完備しております。もし欲しい物がございましたら、ルームサービスをご利用ください。」

一息つくと、V社の人間はぐるりとロビーを見回した。

「何か質問があるお方はいらっしゃいますか?」

「それって、外には出るなってこと?」

一人の女性がそう尋ねる。

「いえ、そういうわけではありません。…ここは治安がよろしくないので、出かける際にはコチラからガイドを付けさせていただきます。」

「監視されろってことかよ!」

どこからか野次が飛んでくる。まぁ、出かけるのにいちいち他人が着いてきたら嫌に思うのは当然だ。

「申し訳ありません。どうか、ご理解をよろしくお願い致します。」

深々と頭を下げるV社の人間。その謝罪姿からは哀愁が漂い、これ以上責める事を躊躇わせた。

「…質問は以上でしょうか?なら、これからお部屋に案内させていただきます。」

ぶつけようのない不満を募らせたまま、被害者達は振り分けられた部屋に向かっていった。

「俺達は同室だってよ、インム。」

「え、ワンディス殿やミン殿とお泊りが出来るってことでござるか!?」

「そうだよ。」

「ひやっふい!」

ぴょんぴょんと跳ねるINМと共に、ワンルーム・ディストピアはふかふかとした絨毯の上を歩く。

(連邦の次は労働連盟かよ。タダ飯は嬉しいけど、早く帰りてーな。)

「部屋、どんな感じなんでござろうか?」

「楽しみだな、INМ!」

ワイワイと喋る最年少と最年長の言葉を聞き流し、ワンルーム・ディストピアはある事を考えつく。

(つーか、別に転移で帰ればよくね?)

ワンルーム・ディストピアがその考えを言おうとしたところで、バタン!とINМが扉が開いた。


「よく来たね!ワンルーム・ディストピア君とINМ君!」


INМが開けたドアの向こうには、ドヤ顔の魔法少女が仁王立ちしていた。

「私の名前はアフD。ラッキーセブンガールな魔法少女さ!」


オマケ


書いていて、ワンルーム・ディストピアなら転移で帰れてしまうと気づいてしまいました。なんとかしないと…。

ちなみに、この小説に政治的意図は含まれておりません。

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