目指せ!奨学金返済編!
第6話 親方!空から〇〇〇が!
その日、珍しく灰二は朝早くに目を覚ましていた。まぁ、正確に言うと四時までFPSをやっていただけなのだが。(もちろん、同居人(?)のミンはぐっすりと寝ている。)
「ふわぁーあ…、俺も寝るか。」
ゴソゴソと布団に潜る灰二。せめて歯磨きくらいはしろと言いたいところだが、この男にマトモな衛生概念を求めてはいけない。清潔のせの字もないような奴だからこそ、ワンルームのこの部屋は立派な汚部屋と化しているのだから。
「おやすみなさーい。」
2年前から使い出したアイマスクを装着し、今まさに寝ようとする。その、次の瞬間
ビィィィィィィィィィィィィィイイイ!!!!!!!!!
警報が、響き渡った。
『警報、警報。中央区の皆さんに警報です。只今、中央区三番地付近に中型ダーティニア及び、ゲートの出現が確認されました。中央区にお住みの方は、建物外に出ないようにしてください。』
中型ダーティニアはおよそ成人程度の大きさである。なので、戦闘をしたとしても本来ならば建築物に対してそこまでの被害は出ない。だが、それはバッド・フロンティア後に訂正された建築基準法に則った建築物の場合だ。殆どの建物がその基準をクリアしているため、さしたる問題はない。…数少ない例外、このボロアパート以外なら、だが。
「なんで三番地に来るんだよ!この前大型ダーティニア出たばっかりだろうが!」
この前、といっても約三週間前だ。無論、灰二はこの間全く戦闘していない。というか、アパートから遠ければ中央区で出現しようが他の魔法少女に任せている。
「ふわぁ…、おはよう、ハイジン。そら、戦闘しにいくぞ!」
何度か目をぱちぱちとさせ、大きな欠伸をするミン。その言葉によって、灰二は前回の無償労働経験を思い出してしまった。
「い、嫌だ!働きたくない!ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!!」
大の字に転がり、赤ん坊のように暴れる灰二。見た目は大人、中身は子供、その正体は魔法少女!…あまりにも、きつすぎる。だが、流石はミン。そんな酷い絵面をスルーして灰二に脅しをかける。
「うるせぇ!家が崩れてもいいのか?あぁん?」
「クッッッソがよ!えーい、とっとと変身させろぉ!このド鬼畜野郎!」
「一言余計だ!【変✩身】」
一瞬にして、見苦しいニートが魔法少女へと変身する。部屋の匂いはまた酷くなってしまっているが、前回の失敗から学んだ灰二は直ぐに換気扇を回す。
(魔法少女になる時の匂いって換気扇で消せるんだから、なんかしょぼいなぁ。)
しみじみとした気持ちになったが、ワンルーム・ディストピアは考えを切り替え、窓を豪快に開ける。…罅が入ってしまったが、そこはまぁ御愛嬌ということにしておこう。
「おらいくぞ、ミン!」
「りょーかい!」
後ろにミンが付いてきていることを確認すると、窓枠に足を乗せる。灰二がこの体勢をしたならば足をつること間違い無しだが、
ガッッ!とローラーシューズで文字通り空を
「ミン、敵の位置は?」
「南西に400m!このまま直進でい……うん?」
タブレットで地図を見ていたミンが、言葉を詰まらせる。ワンルーム・ディストピアは不審に思いつつも、空を滑ってゆく。
「どうした。なんかあんのかよ?」
ミンも地図と周りの景色を見比べながら、首を傾げる。
「いや、他の魔法少女がどえらいスピードで急接近してるんだけど、…居なくね?」
「はぁ?ステルス機能でも持ってんじゃねぇの?」
「うーん、そんな固有魔法があったら有名だと思うんだが。おい、ハイジン。お前知らないか?」
「知るか!つーか、もうすぐ着いちまうぞ。」
話している僅かな間に、100m先のダーティニアを視界に収めるワンルーム・ディストピア。魔法少女特有の身体能力によって、遠くからの視認も可能なのだ。
中型ダーティニアは意外にも暴れずに徘徊しているだけだ。近くに魔法少女の姿も無く、やはりタブレットの故障かとミンは首を傾げた。
「うーん、やっぱり居ないか。」
「まぁ、タブレットの誤作動かもしれないだろ?」
「それもそうだな。よし、ハイジン。ダーティニアまであと50mだ!武器を出しとけ!」
「分かってるつーの!【なんか強いのでろ】!」
ワンルーム・ディストピアが叫ぶと、前回と同じく瀟洒な鍵、レバータンブラー錠が現れる。
ーーー魔法武器:境界の鍵 セット完了ーーー
「おし、じゃーさっさとぶっ殺してやるか!」
鍵を両手でがっしりと掴み、徘徊する人型ダーティニアに特攻するワンルーム・ディストピア。ローラーシューズを加速させ、亜音速のスピードで飛び込む姿は、まるで百発百中の死神の弾丸のようだ。
「おら、死ねやっ!」
ドビュッッッ!
たった一撃で核の周りの泥を吹き飛ばし、核を露出させるワンルーム・ディストピア。何度でも言うが、これは異常な事だ。普通ならば、中型ダーティニアを倒すにはベテラン魔法少女が最低二人は必要だ。初心者で一人を倒すなんて言うのは、自殺志願者となにも変わらないのである。まぁ普通から逸脱しているのは、ある意味灰二らしいとも言える。
「せぇーの!」
もう一度大きく腕を振り、勝利を確信するワンルーム・ディストピア。
それを少し離れた所から見ていたから、ミンは異変に気づいた。
ビュゴウッッッ!!!!
異様な、風切り音に。
それはまるで、鋭い燕が餌をかる時に真っ逆さまに落ちてくるような…そんな音。強いて言うなら、団扇を高速で縦に扇いだ時に出る音に似ているだろうか。
「まさか、
がばりっと空を仰げば、それはすぐさま目についた。
雲を突き抜け、凄まじい速度で降ってくる赤い流星。夜明け前の空だからこそ、その赤は何よりも強く輝く。
「ナニモンだよ!?っていや、それどころじゃない!」
「避けろ!ハイジン!」
「んぇ?」
上から等速直線運動で落下してきたルビーのように発光する赤い星が、露出した核に直撃する!
ガンッッッッッッ、バキバキバキバキッッッ!
一瞬にして核に大きな罅が入り、
ガッッ、シャァァァァーーーン!!!
核が、砕け散った。
それどころか、赤い星は地面にのめり込み接触したアスファルトが隆起し、一部が弾け飛んだ!
アスファルトという皮を剥かれた土が、その何者かを受け止める。辺りにはぶわりと一気に土煙が舞い上がった。その風圧に押され、ワンルーム・ディストピアの体も少し後退させられる。
「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッゲホッ!おい、お前何してくれてんだ!」
思っいきり土煙を吸ってしまい、大きく咳き込むワンルーム・ディストピア。
「大丈夫か、ハイジン!」
土埃の中、ミンもワンルーム・ディストピアの近くに寄ってきた。
「ああ、俺は大丈夫だ。」
「良かった。けど、さっきのは何だったんだ?」
「人、というか魔法少女だと思いたい。」
もし魔法少女ではなかったらぐっちょぐちょの死体が地面に横たわっているだろう。ワンルーム・ディストピアといえども、それを見るのは流石に御免であった。
「呼びかけてみるか?」
と、ミンが言う。
「一応、そうするか。…おーい!生きてんのかー?死んでるなら返事しろー!」
大声で叫ぶワンルーム・ディストピア。
「死んでるのに返事したらそれはもう魔法少女ですらないだろうが。」
「小粋なジョークに決まってんだろ?」
そう言いながら、落ちた中心地に向かっていく。煙によって視界は最悪だが、そこはタブレットを見ることでなんとかカバーする。
「にしても、変な名前だな。」
タブレットを覗きながら、ミンが言う。
「変な名前って?」
「いや、魔法少女INМって書いてあるんだよ。」
「アイエヌエムぅ?イキった中二病患者かよ。」
中二病歴12年の男はそんな風に返した。
そんな他愛もない話をしながら、てくてくてくと歩いていくと、とうとう激突地に到着した。
「さてさて、いったいどんな奴が落ちてきたのやら?」
ワンルーム・ディストピアがそう呟き、倒れている魔法少女を覗き込もうとする。
すると、
がばっ!
と、勢いよく飛び上がり、ガッチリとワンルーム・ディストピアの手を握る。分厚いメガネがずれるが、そんなことは気にしていない。
「…えーと?どちらさん?」
そして、驚いて動けないクソニートにキラキラときた目を向けて、とんでもない事を言ってきた。
「せ、拙者と
オマケ
〇〇〇に入る言葉は、中二病でも、オタクでもありません。
次回わかります。
ちなみに、分かってしまった人は汚いハートを持っているので、分からなくて正解です。
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