去りし者たちの中で

@Kamila

序章

序章

昼下がりの休日、公園はすでに人でいっぱいだった。子供たちは競うようにアトラクションへ駆け出し、彼らの笑い声や叫び声が至る所に響いていた。子供たちから解放された親たちは、小さなグループを作り、日常の出来事について熱心に話し込んでいた。彼は、その喧騒から少し離れたベンチに座り、眺めていた。彼には「補給」が必要だったが、この場所は適していなかった。数多くの感情の乱れが邪魔をし、必要なエネルギーをうまく吸収できなかった。子供たちの未熟なエネルギーか、大人たちの鈍く濁ったものばかり。この退屈さに、彼はあくびをした。

「無駄な時間だ」――彼はトミという名の少年を観察しながら思った。少年は仲間から離れ、一人で遊具に熱中していた。何度か滑り台を滑った後、今度は鉄棒に登ろうとしていた。7歳のトミは小柄で痩せていた。手で掴まり、片足をかけてよじ登ろうとした。母親は女友達と話に夢中で、何も気づいていない。鉄棒は地面からかなり高かった。

「今、落ちる」――彼の顔に笑みが浮かんだ。トミは息を切らしながらもう片方の足をかけた。その瞬間、汗で滑った手が離れ、少年は何が起こったのか理解できず、足をかけ直す間もなかった。トミは頭から落下した。 その時、彼の視界を黄色いサラファンが鮮やかに染めた。長い髪が風に舞い、彼女は駆け寄ると、地面から五十センチのところでトミを抱きとめた。その瞬間、彼の肺を押し潰すような強烈なエネルギーの波が襲いかかった。


「まさか…?」――彼はベンチから立ち上がった。


しばらくして、トミはようやく何が起こったのかを理解した。彼女は少年を抱き、微笑んでいた。彼女の瞳は、どこまでも優しい光を湛えていた。トミの母親は遊具の方を見た瞬間、顔色を変えて悲鳴を上げ、駆け出した。


「トミ!」――恐怖に震える声。


「ママ…」――少年はただただ驚いていた。

「大丈夫よ」――彼女は言った。その声は、誰もが信じざるを得ないほど確かなものだった。


「なんてこと…うっかりしてました!本当にありがとうございます!」――母親はトミをしっかりと抱き上げた。


「どういたしまして。気をつけてね」――彼女はそっと、トミの金色の髪に手を添えた。


「すごくきれいだよ」――少年は見とれて呟いた。彼女はくすっと笑った。その笑い声は、空気を優しく揺らすようだった。


彼はベンチのそばに立ち尽くし、その場から視線を釘付けにされたままだった。だが、今は焦ってはいけない。まだその時ではなかった。この「宝物」は、きっと彼のものになる――。




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