第2話♢出会い
「キミはどうしてココに?」
ドラゴンを倒した後ドロップしたアイテムを
どこから取り出したのか分からない大きな袋に
詰めるのを手伝いながら、彼女の問いに答えた。
「自分でもよくわかりません。気付いたらここに…。」
あまりにも夢のようで
これが現実に起きたことだと、まだ受け入れ難い。
「もしかして招待で入ってきた?」
顎に手を置きながら
目の前の彼女が、私の状況を一言で整理した。
「あ!そうです!なんかリンクを踏んだ瞬間、
目の前にさっきのドラゴンが!」
凄く大きかったなと思いながら、
手振りでドラゴンの大きさを表現した。
「ははっ。可愛い。」
私の少し幼稚なジェスチャーを見て
優しく笑われる。
なんだか恥ずかしくなり、顔が熱くなった。
「でも、気をつけなきゃダメだよ?
知らない人からのリンクは、フィッシング詐欺の
疑いがあるから迂闊に触れないって学校でも習ったでしょ!」
「分かってはいたのですが……手が滑って…。」
さっきまで笑っていた彼女は今度、
頬を膨らませぷんぷんと怒っている。
「えっと……初対面でこんな事を言うのは
助けてもらったし失礼かなっても思うのですが、
みかづき…さん?って意外と子供っぽいですね。」
流石に失礼すぎたかもしれない。
彼女の顔を見て、ハッとした。
やはり、子供っぽいって言われるのは嫌だったらしく…少し困ったように、眉毛が下がってた。
「えー?そうかな……。あ、もしかしてギャップに感じた? 私、ビジュアル良すぎるからね。
あ、かなうで良いよ。」
「じゃあ、かなうさんで…。」
自信満々に顔がいいと語るかなうさん。
何も言えねぇ。
本当にビジュアル良すぎてなんも言い返せねぇ。
左目の下にある縦に並んだ二つのホクロとか
凄く癖に刺さるもん……!!
「君は名前、なんて言うの?」
「
「うつつ、可愛い名前だね。
手伝ってくれてありがとう!」
「いえ…!」
最後のアイテムを袋に入れ終わると
かなうさんはサンタクロースのように
アイテム袋を肩にかけた。
そして、クエストクリアの文字が宙に浮かび、
銀河のようなキラキラと星が見える謎のゲートが
現れた。
「今じゃ技術が進んで、"どこでも扉"がある時代。
こういうゲートくらい呼び出すのは簡単だよ。
"ゲーム"だし、尚更ね。」
確かに、10年以上前だっけ……?
どこでも扉が出来たってニュース見た気がする。
そっか……。
ゲームなら現実よりも
簡単に実装できちゃうか…。
「それじゃあ、街に戻るから手を掴んでほしい。
"絶対"に離さないでね。」
ここにずっと居ても危ないからと、
かなうさんは私に手を差し出した。
謎のゲートが何なのか分からないまま
私はかなうさんの手を掴み、
一緒にゲートへと入った。
「びっくりした?」
ゲートを通り抜けて見えた景色は、
星空が綺麗に見える街並みだった。
深夜だからこそ人通りがなく静かだが、
この街が安全なのはひと目でわかる。
歌舞伎町とか深夜の駅周辺みたいに、
群れている若者は1人も居ない。
酒で酔いつぶれて放置されているおじさんは
数人いるが……。
「イタリアのローマみたい。」
立ち並ぶ多様なお店を、街灯が照らしていて
とてもドラマチックな雰囲気だ。
「ローマより平穏だよ。」
スリやドラッグ、詐欺はこの世界とは無縁だと
かなうさんは言った。
「それは安心ですね。」
「ああ、退屈しちゃうくらい快適だよ。」
どうやら、この世界の時間軸は現実と同じみたいで
辺りを見渡すと酒場らしきお店以外は
全てクローズしていた。
きっと昼間は賑やかなんだろうな。
「もう少し転移場所を考えよか?
こんな広場で何考えはってん…自分目立っとるで?
エリート"魔法剣士"さん。」
後ろから、かなうさんを呼ぶ声が聞こえた。
「げっ……。
他人の風呂場じゃないだけマシだわ。」
気になって後ろを振り返ると、
そこには、袴を着たピンク色の髪の男性が
傘をさして立ってた。
目元は前髪で隠れていて、
どんな顔かはよく分からない。
雨も降っていないのになぜ…?
今時の流行りなのかな?
見た感じ視界悪そうだけど…。
「雨降ってもいない深夜に傘さしてる方が
どうかと思うわ。不審者確定〜!」
「お宅の引きこもりお嬢ちゃんも同じでは?」
「
「俺だって可愛い顔してはるやないの。」
「前髪で見えねぇよ。」
そして、うざいの一言で片付けるかなうさん。
ああ、きっとこの人の事が苦手なんだろうなぁ。
凄く顔に出てるし口が悪い。
まだ数十分の出会いだけれども
かなうさん、一見クールに見えて
全部顔に出るから……。
本当に子供みたいにわかりやすい。
「ところでそっちのお嬢ちゃんはどうしはったん?」
はじめましてと聞きなれない関西弁で
挨拶をしてくれる前髪の人。
「はじめまして……。」
悪い人では無さそう……?
一方的にかなうさんが苦手意識してるのかも。
「いいよ、こんなのに挨拶しなくて。」
「えらい言い分やわ。」
「まぁ、今日は特に用もあらへんからもうええわ。
俺の名前は、
困ったことがあればいつでも尋ねてな!」
紫雨さんはそう言って私達の前を通り過ぎて行った。
「アイツこそ深夜に何やってたんだ……?
うつつ、巻き込んでごめんね。」
何も悪い気にはなっていないのに
かなうさんが謝った。
「いえ!大丈夫です!今の私はとりあえず、
かなうさんに着いていくことしか出来ないので…。」
本当にこれからどうしたらいいの?
このゲームからのログアウトの仕方も
聞かなきゃいけないし……。
「そうだったね。
もう少しで私の拠点に着くから頑張ってね!」
「はい!」
そして辿り着いた場所が、
アンティークショップだった。
「凄い数のガラクタですね。」
「断じてガラクタでは無い。宝の山だ。」
刺さる奴には刺さるんだ。
うつつは見る目がないねと怒られてしまった。
どう見ても、生活に必要無さそうな物ばかりだけど……。
「2階へ行こう。」
階段を登り、鍵付き扉の奥へと案内される。
なるほど……。2階は自宅なのか。
「ここがリビングね。」
案内された場所は、1階のアンティークショップとは変わって、部屋には必要最低限の家具しか揃えられてなかった。
「ちゃんと生活してます?」
「キミ結構毒舌だよね。……別に構わないけど。」
適当に座ってと言われたので
座り心地良さそうなソファに座ってみた。
ふかふかだ!!これ最高!
「ここまで私に着いてきてくれたけど……きっと
うつつが今1番知りたい情報は、このゲームから
"どうやってログアウトするか"を知りたい。
そう思ったんだけど……違うかい?」
まるでこちらの考えを読んでいたかのように
かなうさんは妖しく笑った。
「はい。その通りです。」
「だよねー。私もうつつと同じ状況になったら
真っ先にどうやって帰るか考えるもん。」
分かる分かると、首を縦にぶんぶん振っている。
「ログアウト方法は簡単だよ。
ここ、リブリー・マージュという区域内にいることが条件1だ。そして条件2なんだけど……
スマホもしくは集会所で手続きをする必要ある。」
この時間じゃ、システムメンテナンスのため
集会所は開いていない。
スマホはあるかと確認される。
スマホなら確か、手に持って……
「……。」
ない……。
もしかしてドラゴンに遭遇した時に落とした……?
今日1泊ここでお世話になって、明日集会所から
帰るにしてもスマホがないと生活に困る。
「どうしよ…。」
私がどんなに不運でもやってこれたのは、
スマホが…SNSが私の承認欲求を満たしてくれたから。
それがなくなったら私は一体……。
「明日もう一度今日の場所に戻ってみようか。」
「ありがとうございます…。」
落ち込んでいる私の肩を
ポンポンと叩いて励ますかなうさん。
「うつつの目の下。
隈も凄いし、今日はここで休んでいきな。
風呂も自由に使っていいから。
あ、部屋はそこの左側の私の寝室使って。」
リビングから見て2つある部屋の左側を指差した。
「でも、それじゃあかなうさんの寝る場所が……。」
ここまで良くしてもらって、
さすがにベッドまで奪うことは出来ない。
「問題ないよ。どこでも寝れるように書斎にもベッドがあるから。」
「そうなんですね…お気遣いありがとうございます。」
状況的に受け身になるしかない私は、
かなうさんの気遣いに甘えることにした。
明日も仕事あるし、
スマホ……無事に見つかるといいな。
お風呂に、パジャマまで借りてしまった私。
「おやすみ……。」
ふかふかのベッドへ身体を倒すと、
不思議と私は簡単にも眠りについてしまった。
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