第20話  社畜陰キャの苦悩

さて、リア充とはいったいどんな存在を定義する言葉だろうか?

捉え方、解釈は人によるだろう。

この俺、野村立樹は自分を陰キャと定義付けている。

陰キャとは陽キャの対義語、対となる存在だ。

そして陽キャとリア充は同一の存在だと俺は思っている。

コレも俺が勝手にそう思ってるだけで捉え方は人それぞれだし、異なる考えの人もいるだろう。


リア充とはリアルが充実しているを略した言葉だ。

リアルが充実している、つまり現実に不満を持っていない、現状に満たされていると言う事だ。

こういった精神状態の人間は基本的には多くの者が前向き、安定した精神状態だと言える。

結果として笑顔が増え、明るくなる。

そして陽キャとは太陽の如く明るい笑顔をなんの迷いもなく振りまく事の出来る人物だと俺は思っている。

世界に不満なく、物事への悩みなく、屈託の無い笑顔を無意識に作り出せる人間。

それが陽キャだ。

ならば陽キャとリア充は同一の存在ではないか?

そんな風に俺は解釈している。

勿論これは俺の解釈であって解釈は人の数だけ存在する為、俺の解釈が必ずしも正解じゃない。


以前、俺に恋人がいたり結婚しているヤツの事をリア充だと言ってた奴がいた。

恋人がいる事がイコールでリア充と紐付けているのだ。

一理ある解釈だと思う。

人間は孤独を無意識に嫌う生き物だ。

集団で生活し集団で学び集団で笑い合う。

故に社会は存在する。

その社会の中で生きて行く事を半ば強制されている人間にとって孤独は毒となるだろう。

そんな孤独を癒す存在が家族だ。

しかしいずれ家族、つまり親は子より早くこの世を去る。

親の死という孤独から逃れるためには新たに家族を創る必要が出てくる。

それが嫁、妻と呼ばれる存在だ。

つまり結婚だ。

しかし結婚…ひいては彼女という存在を作るのは至難の技だ。

俺は取り分けイケメンと言う訳でも無ければ要領の良い方の人間でもない。

金も無ければ甲斐性もない。

所謂駄目人間だ。

そんな人間に女性が惹かれるか?

答えは否だ。

故に彼女を作る事は至難の技なのだ。

そんな最高ランクの難題をクリアし、彼女を作り、結婚まて漕ぎ着けた者をリア充と呼ばずしてなんと言おうか?

また結婚には多くの金が必要だ。

家族の為の生活費、こどもの為の養育費や学費… 

この上近年の世界的な財政難は看過できる物では無い、際限無く上がり続ける税金、物価の上昇。

人1人生きて行くだけでもやっとの状態だ。

此等を乗り越え資金を用意出来る人間など心に余裕無くては成せない偉業だろう。

つまり此等をクリア出来る経済的余裕を持てる者こそがリア充なのだ。


まぁ…小難しい持論など抜きにして彼女がいたら羨ましいと思うのが男って生き物だ。

彼女に精神的に塞ぎ込んでる時に慰められたら、励ましてもらえたら誰だって嬉しいはずだ。

生物は異性に欲を感じる生き物だ。

それは人間だって例外ではない。

詰まる所異性…彼女を欲するのは人間のさが、本能なのだ。

そんな本能を満たす彼女なる存在がいるならもうそれだけでリア充だと思う。


そういう解釈で良いなら俺はリア充なのか…?


俺みたいな奴がリア充とか笑わせるぜ…


と、何故俺がこんなクソ長い思考に没頭してまで自分をリア充か否かを熟考していたかと言うと……。

 


「未だに信じられない…結城さんが俺を好きだなんて……」



そう、結城さんが俺を好きだと言ったのだ。

小柄で可愛い顔立ちの美女。

しかも巨乳。

あんな子が俺を好きだと言ったのだ。

もはや奇跡だ。

彼女と出会ってそろそろ4ヶ月、こんな短い期間で彼女は俺なんかのどこを好きになったというのか?

彼女は優しいと俺の事を評価している。


ぶっちゃけ優しくした覚えなど全く無い。

頼られているというのは理解していたし、好感も持たれていたのもわかる。

しかしそれは会社の先輩としてだとおもっていた。

異性として好かれてるなんて夢にも思っていなかった。


未だにフェイクの可能性を疑っているが、ここ最近の彼女の行動を見ればその可能性も無いと思える。


彼女には何度も助けられた。

情けない話だ。

昔ながらの古い考えなのかも知れないが男が女に何度も助けられるのは情けない、恥ずかしい事だと感じてしまう。

しかし彼女はそんな事気にはしないのだろう。


何より彼女の好意が嘘ではないと実感出来てしまう事象が今、目の前にあるからだ。

今俺は湯に浸かっている。

そうお湯、つまり風呂だ。

勿論自分の家の風呂ではない。

そう、結城さんの家の物だ。

すっかり酔いも覚めて風呂のお陰で思考もある程度クリアーだ。

なので改めて思うのは異性の家の風呂に入るなんてのは到底非リア充には出来ない…もっと言えば縁のない話だ。

ならば俺はリア充にカウントされるのか…?



「はぁ…わからん…なんもわからん…」


と、熟考をかさねているが正直な所今はそんな事はどうだって良いのだ。


「これからどうしたものか…」


こんな形になってしまった手前、アイツがいる家には帰り辛い。


アイツの依存度が跳ね上がっているのが目に見えて想像出来てしまうからだ。

前以上に迫ってくるだろう事も予想出来る。

アイツは美女だしスタイルもいい。

経験豊富でやれば気持ちも良いのだろう。 

しかしそんな邪な本能よりも気持ち悪さが勝つ。

目の保養になる以上の事をアイツに求めようとは思わないのだ。



「はは…相変わらず枯れてんなぁ…」


そんな自虐を口にしてると


「お湯加減はどうですか?」


と、問いかける声


「へ?結城さん!?」


「ふふ、どうですか?温まってます?」


「あ、ああ、ありがとう…丁度いいよ」


「ふふ、それは良かったです〜着替えはここに置いておきますから〜それじゃゆっくりしてくださいね〜」


「ありがとう…」


ビビった…

まさか入ってくるのかと思った…

入って来たらどうなってたろうか…

当然風呂に入るのだから裸だろう。

白い綺麗な柔肌。

そして胸の大きな果実。



「柔らかかったなぁ…」



さっき触った胸の感触。

女性の胸。

彼女の裸体を想像し、その胸に実った大きな丸い果実は確かな柔らかさと温もりを持っていた。

初めて触れた。

女の人の胸に。


佳代の胸に触れたいとは全く思わない。

あれ程美人で胸だって結城さんと変わらないくらいに大きいのに…。

全くそういう気持ちにならない。


なのに結城さんの肌にはまた触れたいと、そんな事を思ってしまう。

こんな変態みたいな事を思ってるなんて彼女に思われたくない。


「そうか…俺は彼女に嫌われたくないんだな…」


嫌われたくない。

いつからか、そんな風に思う様になっていたのかと自分の変化に驚く。

俺も彼女に絆されてきているのか…

誰かを好きになるのは怖い。

また裏切られてしまう。

そんな懸念が頭から離れない。

あんな思いをまたするのは嫌だ。

だからもう誰かを好きにはならないでおこうと考えていた。

なのに俺はそんな自分の決め事すら守れないでいる。


でも誰かを好きになるのは理屈じゃないとか昔何かの漫画かアニメで見た気がする。

はは…確かに理屈じゃないのかもな…。

そんな事を考えながら湯に肩まで浸かる。


考えなければならない事は多い。

今までの事。今後のこと、これからの事。

しかし今はこの安穏を少しだけ享受していたい。


落ち着いて風呂に入ったのが久しぶりだったのだから…








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