30 俺が進む道は
出港は数時間後だと聞かされた。
それまでの間、俺たちはベロニカが用意してくれた豪華な商館の一室で待機することになった。
海に出れば、おそらく海賊団との決戦になる――。
それまで特にすることがないので、俺は窓からポーラベルの街並みを眺めていた。
活気のある街並みと異国情緒は、旅行気分を高めてくれる。
魔王との戦いが終わったら、もう一度ここに来てみようかな。
ふと、そんなことを思った。
今度は勇者としての仕事じゃなく、純粋にリゾート地への旅行として。
うん、悪くないかもしれない。
前世は旅行なんてする暇もなかったからな……。
と、
「どうした、ジルダ。楽しそうな顔をして」
レナが近づいてきた。
「ん? いや、いつかここにもう一度来たいな、って」
俺はレナに言った。
「今度は旅行で」
「旅行か……いいじゃないか」
レナが微笑んだ。
「そのためにも、海賊団を倒してここを平和にしなきゃ、な」
「……少し変わったな、ジルダ」
レナが俺を見つめた。
「? そうかな?」
「以前は、そんなふうに積極的に戦う感じじゃなかっただろう?」
と、レナ。
「どちらかというと余計な戦いを避けているように思えた。私と初めて戦ったときも単なる訓練だったし、マルグリットとの戦いだってそうだ」
「まあ……そうかもな。昔は自分が生き残ることが最優先で……そのための力を欲していたんだ。だから訓練ばっかりしていた」
俺はレナに言った。
「だけど、そうして生き残れる目途が経って……あらためて思ったんだ。これから先、俺は何をやるべきなのかな、って」
そう、俺はとりあえずの死亡ルートを回避した。
じゃあ、その後は?
俺は何をするべきなのか。
何をしたいのか。
そして、どうなりたいのか――。
「勇者なんて呼ばれるのは、まだ慣れないし、俺にその資格があるのかどうかも分からない。ただ、たくさんの人を守るために戦うっていうのは、すごく充実感があるんだ」
前世では、感じたことのない気持ちだった。
自分の力で道を切り開いていく。
誰かの期待に応えたいと思う。
自分の中にそんな気持ちが眠っていたなんて、意外だった。
でも、そんな今の自分を――俺は前世の自分よりも好きになっていた。
「俺は、今の俺でいたいし、今の俺で在り続けたい。それが今の俺のやりたいこと……かな」
「――そうか」
レナはうなずき、微笑んだ。
いつも凛として厳しい雰囲気の彼女にしては珍しい、優しい笑顔だった。
と、
「ジルダ、レナ殿下。そろそろ出港の時刻だそうよ」
マルグリットがやって来た。
「行くか」
「ああ」
俺とレナは顔を見合わせ、うなずき合った。
俺が俺で在るための――新たな戦いの始まりだ。
ベロニカが用意してくれたのは、最新鋭の商船だった。
動力部に最新の魔導機関が積まれており、また武装も充実していて、この辺りでは最高の戦闘能力を誇る船だという。
海賊団との決戦に備えて整備してあった、とっておきの一隻だ。
「今回、わたくしも乗り込みます。あなたがたにこの船と――わたくしの命運も託します」
「分かった」
うなずく俺。
「勇者様に……そして、わたくしたち全員に海神のご加護があらんことを」
ベロニカが微笑む。
さあ、今回は海で決戦だ――。
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