第6話 恋人が他の人と結婚⑥

自分でも、よく怒りを抑えたと思う。


そうよ。ちょうどいい機会だったじゃない。


「昇進って、主任にですか?」


「そうよ。急に課長にはなれないでしょ。」


すると原田君は、つまんなそうにため息をついた。


「俺、役職とかいらないです。」


「えっ?どういう事?」


原田君ぐらい仕事できる人だったら、当然主任になりたいと思っていたけど。


「責任だけ負わされて、やってること報われないって、使い捨てみたいじゃないですか。」


唖然とした。今の若い人って、こういう考えなの?


「報われないって……少なくても、給与には反映されるわよ。役職手当がつくから。」


「いくらですか?」


「確か、3万円くらいだったかな。」


「たったの3万ですか。はぁっー。」


何なの?何なの⁉何なの‼


それは何?コスパの問題⁉それか、今の新人世代のタイパ⁉


私には、ついていけないっ!


その時、結城の声が聞こえた。


「……おい、原田。」


「はい。」


「少なくても、主任に上がるには、その程度の仕事ができているか判断される。役職だけ上げて、責任だけ負わす事はしないよ。」


「そうなんですか。」


「ああ。浅見は原田の能力を買ってるんだから、期待に応えろよ。」


「期待……ですか。頑張ってみます。」


私の胸の中は、じーんと熱くなった。


こういう時、フォローしてくれるのが、結城なんだよね。


「ありがとう、結城。」


「いや、困ったら俺に言えよ。助けるから。」


私は結城を見て、改めてこいつが社長になったら、いい会社になるんじゃないかと思った。


普通、協力するとは言えるけれど、助けるなんて言えないもんね。


今、ありがとうだけでは足りないくらいの感謝を、結城に感じていた。



そして昼休み。


私は結城の言葉を、まだ脳内でリピートしていた。


― 助けるから -


それだけで、胸が温かくなる。


結城って、私の事どう思っているんだろう。



その時だった。


『たった今入ってきました。ホットなニュースです。人気俳優・松本裕人さんが、元アイドルの方と入籍したと発表しました。』


息が止まった。


「えっ?」


私はニュースが流れているテレビを、凝視した。


そこには、裕人の顔が映っていた。


『いやー、交際わずか2か月でのスピード婚。さすが、人気俳優は決断も早いですね。』


『お相手の方は、妊娠されてるんでしょうか。』

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