第5話「学業“再会“」

 前回からの、あらすじ。

 転生バーン!、周囲との軋轢ドーン!、

家出バーン!、試験ドーン!、合格バーン!以上!



 ロイエンブルク王国軍軍学校。

王国内で最も有名な軍学校であり、大学校も併設されている為、非常に充実した環境を提供する。

そこに合格する事は王国軍エリートの証であり、入隊試験からこの軍学校に入学する事は非常に稀である。


 そんな軍学校にハインツが入学してから、既に半年が経過していた。

王国一の軍学校なだけに、その生活は非常に過酷であった。


 朝四時には起床し、戦闘服装を着込んで班毎に集まり、中庭で点呼。

念入りに柔軟を行い、その後は王国軍行進曲「ロイエン防衛隊」を歌いながら、ランニングを10km、30分の休憩を挟み、帰りも、歌いながらランニングで10km。


 5時半迄には再び中庭に集合し、点呼の後に無酸素運動…つまりは筋トレを行う。

集団でタイミングを合わせての腕立て伏せ。

ここで、もしもダウンしたりすれば、班の連帯責任として懲罰を受ける。次に腹筋、これは二人一組となり行う。

6時には筋トレを終え、男女に分かれてシャワーを浴びる。


6時半からは朝食であり、食堂で一時の至福を味わう。

ビュッフェ形式で、ライ麦パンやザルトカルトッフェン、ザワークラウトだけでなく、各種ソーセージやミートボール、アイントプフにシチューを思い思いに、存分に盛り合わせ、腹一杯に食べる。

食堂には和気藹々とした雰囲気が流れ、教官も食事を共にし、存分に語り合う。


 8時から8時45分までは自由時間であり、取っている講義の準備をする者が殆どだが、中には終わっていない課題に涙を流しながらラストスパートをかける者も居る。

一つでも単位を落とせば進級出来ないのだから、必死にもなろうというものだ。


 本来であれば、模擬階級の差もあり、規律の乱れに繋がるため、上級生を手伝うことなど殆どない。

しかし、ハインツは、自身の用意を終えた後は、基本的に、ウォルフガングの課題を手伝うのがルーティンとなっている。


そうでなければウォルフガングの単位が危うく、何より、ハインツの態度が非常に礼儀正しい為、黙認されているのである。


 その後は、12時半〜13時半の昼食を挟み、16時半まで学科や実技の講義を受ける。


 ハインツは学科が非常に得意で、特に兵器学と魔導学、戦術学に於いては常に次席を保持し、全学年の中でも上位の成績を有していた。

実技も平均以上の成績を残し、既に模擬階級は軍曹に達しており、曹長への昇格も時間の問題と言われていた。


 それとは対照的に、ウォルフガングは学科に関しては、兵器学と魔導学を除いて壊滅的であった。

だが、実技は全てにおいて軍学校でもトップクラス、教官にすら勝つこともある程であった。

そんな状況でもウォルフガングは奢ることなく、学校生活を送っていた。


 ハインツが、ある日、ウォルフガングに問うたことがある。


 「何故、実技がそこまで強く、模擬階級も既に曹長であるのに、驕らないでいられるのですか?」


 ウォルフガングは、呆気にとられた後、吹き出す様に爆笑し、答えた。


 「私はそこまで大層な人物では無いからな。

いくら実技の点数が高かろうと、実戦を一度も経験していないペーペーに過ぎない。

そういう驕りはな、軍人で居ながら、定年退職が出来てから、初めて許されるものだと思っているよ。」


 ハインツはその言葉に強く納得し、ウォルフガングにより一層心酔する事になる。


 講義が終わった後は、夜の鍛錬の時間となる。

16時45分迄には班毎に中庭に集合し、朝と全く同じメニューをこなす。

夕方に辺り一帯にむさ苦しい男女の大声が響き渡るが、周りには民家一つない草原が広がっている為、問題は無い。


 19時15分には鍛錬を終え、そこからシャワーが終わり次第、各々で食堂に向かい、夕食となる。


朝昼はビュッフェ型式だが、夕飯だけは定食となる。

とは言え、量は非常に多く、十分な栄養とカロリーが取れるように献立が考え込まれている。

 夕飯を終えると、22時の消灯までは自由時間となる。


 本を読むも良し、勉学に励むも良し、同室の学友とボードゲームやカードゲームにはげむも良しである。


定番のボードゲームとしては、初代国王が考案したと言われているチェス、リバーシブル、軍棋、囲碁等の他にも、ロイエンゲームや、囲碁と軍棋を組み合わせたイリーゴ等が存在している。


 カードゲームに関しては、それこそ軍学校や寮毎に種類があり、日夜オリジナルが生まれている。


 そうして、1日を終えるのだ。消灯時間後は皆、例外なく、気絶するように眠りに就く。そうして、朝の鍛錬に備える。


 最初の一ヶ月ほどは慣れるのに必死で、周りを見る余裕など無かったハインツであったが、地頭の良さと、元々行なっていた鍛錬により鍛え上げられた体が相まり、軍学校の厳しい規律にも順応した。

 入学から2ヶ月が経ったとき、これまで行ってきた情報収集が実り、とうとう、念願との再会を果たすことになる。

 

 軍学校の廊下にて、ハインツが、辺りを見渡し、ここに居るはずの男の姿を探す。

一人のガタイが良い茶髪碧眼の好青年が、廊下の角を曲がり、姿を現す。


 ハインツは、瞳を輝かせ、歩いているとは思えないほどの速さで、男に駆け寄り、目の前で立ち止まると、最敬礼をしながら口を開く。


 「ずっと、お探ししておりました。お久しぶりです。ウォルフガング曹長!」


 好青年…ウォルフガングは、瞬きを繰り返し、目の前の、黒髪翠眼の小柄な美青年を見つめ、驚愕しながら、半ば叫ぶように、口を開いた。


 「ハインツ!?どうして、軍学校に…いや、捜索ご苦労であった、ハインツ一等兵。

貴官の献身と協力に感謝する!」


 ウォルフガングは、答礼しつつ、ニヤリと笑い、

ハインツの耳に顔を寄せ、囁く。


 「今晩の自由時間に、四番宿舎の裏手に集合な?」


 そして、直ぐに顔を離すと、答礼を解いて、歩き去る。

 

 ハインツは、再び、ウォルフガングと、出会えたという事実を噛み締めながら、その日の講義に備えて、歩き出した。

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