25.リィラ・ヴィクトリー

「ひゃうっ!?」


アキラは咄嗟にサクラをお姫様抱っこし、ジャンプしようと構え、サクラは突然の動きにビックリする。


「あ、動かなくて良いぞ!私が守ってやろう」


リィラはおもむろに手をこちらに向けて、クイッと下に下げる。


すると天空から両刃の大剣が降ってきて、それが地面に突き刺さった。


アキラはよく分からなかったが、白い謎のドアから出てきた人間である。


きっとこの剣にあの攻撃を防ぐ効果があるのだろうと一応信じてちょっと待つ。


念の為攻撃が当たりそうになったら飛べるように、足に力だけは溜めておく。


すると信じた甲斐あってか、大剣の鍔中央に付いた球体が輝きだし、周囲3m辺りで六角形が大量にくっついたようなシールドが現れ、触手の攻撃を全て防いだ。


まるでゲームの防御機能のようである。


怪獣の触手攻撃はしばらく続いたが、思ったより硬かったのか、頭の触手での攻撃は諦め、巨大な右腕の方をぐぐぐ…と振りかぶった。


「あれは防げるのか?」


アキラは念の為少女に確認する。


「ふむ、不安か。まぁ安心しろ!なんたって私は勇者だからな!」


「その見た目で本当に勇者なのか…?」


無い胸を張り自信満々そうにリィラは言うが、やんちーは胡散臭そうな目で見る。


胸の【ニート】の文字が強調され、全く威厳がない。


「あぁ!この姿だと勇者に見えないか!しょうがないたまにはあれに着替えるか」


ふっふっふとリィラは、足元に魔法陣を出現させる。


「へん〜しんッ!!!」


リィラはこの世界で見たヒーローのような掛け声をし、謎の動きとポーズをとって静止する。


すると魔法陣から少しづつ風が巻き起こり、それは巨大な竜巻となって視界を妨げる。


竜巻が邪魔で怪獣がいつ攻撃してくるかも見えず、ちょっと邪魔である。


怪獣はお構い無しに竜巻が起こる場所へ腕を振り下ろした。


瞬間、巨大な斬撃が竜巻の中から現れ、怪獣の腕を切り飛ばした。


「ギュオオオオオオオオォォォォォオオオオオオオオ」


竜巻が晴れた後、そこに居たのは巨大な白い鎧。


黒いマントをはためかせ、その身長と同等の大きさをもつ巨大な2つの大剣を両手に持った騎士が立っていた。


2つの巨大な大剣は、まるでオシャレなサバイバルナイフを超巨大化させた様な見た目の刃で、地面に下ろしているだけで地面にヒビを作っているほど重量感がある。


そしてこの鎧、あの少女とは明らかにサイズが違う。


どう見てもあの少女が入っているように思えないのだが、その鎧からは先程の少女と同じ声が聞こえた。


「どうだ!?これなら大分勇者っぽいだろう!これは私が魔王を退治しに行った頃によく使っていた鎧でな!色々とエンチャントを施したりして結構こだわりの逸品で〜」


身長は2mを超えており、その大きさからして勇者と言うよりはただの重騎士のように見える。


ドガシィン!と左手に持った巨大な大剣を肩に置きながら喋り続けるリィラだが、怪獣はそれを待ってはくれないようで、今度は残った左の腕を振りかぶる。


「むぅ、まだ実力差が分からんか…」


リィラは仕方がないとばかりに怪獣へと視線を戻し、右手の大剣を左斜め上に大雑把に振るう。


すると先程のように巨大な斬撃が質量を持って現れ、怪獣へと向かう。


「ギュオオオオオオオオォォォォォ!!!!!」


飛ぶ斬撃を怪獣は果たしてどうするのかと眺めると、左腕を振り下ろして斬撃を砕いた。


「わお。意外とやるなあのでっかいの」


「………………………」


怪獣は飛ぶ斬撃を砕いた後、頭の触手からバチバチと放電し始め、電撃迸るエネルギーを溜め始めた。


「えっ、もしかしてビーム撃つのか!?」


突然の行動にリィラがびっくりする。


「お、おい!あれももちろんどうにか出来るんだよな!?」


やんちーが叫んでリィラに問う。


「む?まだ私を信用できてないか?…いや、あの攻撃を砕かれたもんなぁ。しゃあないちょっと本気出すか!」


リィラはそう言うと、ドンッと怪獣の腹部に向かって飛び蹴りをぶちかました。


貯めたエネルギーは暴発し、その発光から今にも爆発しそうな気配を感じる。


「【ゲート】!!!!」


リィラが叫ぶと、吹き飛んだ怪獣の後ろに巨大な白い門が現れ、そのままリィラと怪獣を飲み込みゲートが閉じた。


突然の動きに呆気に取られていると、水平線の向こうで巨大な爆発が起きていた。

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