第4話
こうして、証拠をそろえたコアラたち。
翌日、もう一度、王宮で裁判をやり直すことになりました。
みんなが見守る中で、今度はコアラが説明を行います。
「ガス漏れ検知器の点検は行われていました。これがその証拠です」
コアラは、事務所からコピーした「しょうぼうせつび点検表」のガス漏れ検知器のページをマンドリル裁判長に提出しました。
マンドリル裁判長は、ろうがんきょうをかけて、それを読み上げます。
「なるほど、しょうぼう点検は3月に行われ、ガス漏れ検知器も異常がないと書かれています」
ようすをうかがう動物たちが、ざわめいています。
これは、点検をしっかりやっていたという何よりの証拠となります。
黒ひょうは反論できず、だまっています。
「…」
さらにコアラは続けます。
「そして、ここにひとつ、分からないことがあります。なぜ、点検結果は良かったのに、ガス漏れ検知器は働かなかったのでしょう?それは、誰かがガス漏れ検知器のヘッドを外したからです」
「せいしゅくにっ!」
おどろくべき事実に、ホールのざわめきがピークに達すると、裁判長がこづちをならしました。
コアラになぜ、そういった結論になるのか説明するよう命じます。
コアラはうなずきました。
「誰かが外さなければ、ガス漏れ検知器は働いていました。もちろん、あらかじめガスの配管に穴が空いていた場合、けいほうがなります。なので、今回「はんにん」は、ガス漏れ検知器を外したあとに、ガスの配管に穴をあけたのです」
「はんにんだと?」
黒ひょうの目が見開かれ、声をあらげます。
「コアラ、きさまは、誰をはんにんとして告発するのだ!」
「もちろん、あなたです。黒ひょうのエメルダさん。今からその証拠をていじします!」
コアラは裁判長に、2枚の写真を提出しました。
1枚は、ガス漏れ検知器の写真。
もう1枚は、ガス配管に穴の空いた写真です。
コアラが、この写真についてしょうさいな説明をします。
「1枚目の写真はガス漏れ検知器の写真ですが、よく見ると、検知器のヘッド部分に「たての筋」が何本か入っています。これは、爪をあてがって外したこんせきだと思われます。そして2枚、これはするどいキバで、配管に穴をあけたと思われます。つまり、はんにんは…」
「異議ありっ!爪とキバを持つ動物が俺とは限らないぞ!ここにいる元・王様に、ホワイトタイガーだってそうだろう」
黒ひょうはひたいに汗をにじませ、必死に反論します。
コアラも負けじといい返します。
「いいえ、この爪のあとが何よりの証拠なんです。僕とゴリラさんが昨日、厨房でガス漏れ検知器のヘッドを外した時、ゴリラさんは背伸びをすれば、手が届きました。ゴリラさんの身長は手を伸ばした時、2メートルあります。ホワイトタイガーのリアムさんも、ライオンの王様も同じ身長です。つまり、爪をあてがって検知器を取るということは、2メートルより身長が少し低い場合なのです」
黒ひょうはキバをむき出しにして、ギリギリと食いしばりながら話を聞いています。
「エメルダさん、あなたはホワイトタイガーさんよりも一回り、体つきが小さいはず。ガス漏れ検知器のヘッドを外すのに、爪を伸ばさなければ、ギリギリ届かない身長なんです!」
とうとう、黒ひょうは何も言い返すことができなくなりました。
マンドリル裁判長がその様子を見て、言いました。
「答えが出たようですね。判決、ライオンの「王様」を無実とし、黒ひょうエメルダ、あなたを今回の事件を起こした犯人として、有罪とします!」
「グオオオーーッ」
黒ひょうの悔しそうな叫びが、ホールにひびきました。
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