顔整いの苦悩
エンゲイジ男
プロローグ
「旭君って、絶対遊んでるでしょ」
大して面識もない女性に、そう言われた。
何も今回が初めてのことではない。
女性と親しくなろうとすると、大抵の場合このように言われる。実際は女遊びの経験など全くない小心者なのにだ。またか、と思うと同時にこの人は一体自分の何を知っているのだろう。と楽単よりも呆れてしまうことの方が多くなってきた。
旭優 24歳 公務員 交際経験なし
自分がなぜ「遊んでいる」と思われてしまうのかを考えたり友人に聞いてみたりすると、大抵の場合容姿について言及される。
友人の大嶋を飲みに誘い、これについて相談した時は
「男の俺が見てもかっこいいと思う顔、清潔感、ファッションセンス、ある程度の教養。これがあって女遊びをしたことない方がどうかしてる。神はほんとに不平等だよな」
と一蹴された。しかし大嶋が行ったようなことで実際になにかしらの利益を得たようなことはこの24年間1度もない。
そうは言っても、たしかに自分は容姿に恵まれているとは思う。俗に言う、アイドル顔というやつだ。大学時代の飲み会で、実は昔某アイドル事務所の研修生だったと嘘をついてみたところ、誰にも疑われなかった。つまり世間の私に対する評価は
「アイドルにいたとしてもおかしくない」
であるということになる。身長は日本人男性の平均程度だし、話が特段面白いわけでもなく、秀でた特技があるわけでもない。それでも、ここまでの人生顔だけである程度の評価を得ることができた。
ではなぜ、交際経験なしなのか。
それは、顔のいい男は女を侍らせているというようなイメージが自分に当てはめられてしまうからである。
第一印象というものは非常に重要だとよく言われるが、本当にその通りである。
その人の容姿というのは第一印象の中でものすごく大きな割合を占める。綺麗な女性と会った時、最初に思うことは大抵「綺麗な人だ」であることだろう。
その結果、出会う女性の自分に対する第一印象は「顔が良い」であり、それがそのまま「きっと遊んでるだろう」に結びつくのだそうだ。
その結果、初対面時から「遊び人」のレッテルを貼られた状態で恋愛を開始することになる。
自分にだって好みの女性を選ぶ権利はあるし、職場で恋愛はしたくないという理由で、社会人になってからは全くと言って出会いがないため、マッチングアプリを始めてみた。その結果がこれである。
まったく、恋人を作るためのサービスで恋愛からどんどん遠ざかっていくとは皮肉なものである。
だが、めげる訳にはいかない。恋人と旅行に行ったり記念日を祝ったりしてみたい。
旭優はそう決意した。
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