第16話 視線
「――いやー今日は楽しかったね
「はい、師匠! 今日は誘ってくれて本当にありがとうございます!」
「いやいや、もういいよ
「……
それから、数時間後。
茜に染まる帰り道を、そんなやり取りを交わし歩いていく水谷さんとあたし。普段は違う方向だけど、ボーリング場からだと途中までは同じとのことで一緒に帰ろうと強く誘ってくれて……うん、ありがと水谷さん。そして、ほんとに楽しかった。また行きたいなぁ。……それに、今度は――
……ただ、それはそれとして――
「……どうかした? 葉乃ちゃん」
「……あっ、その……ううん、何でも」
すると、ふとそう問い掛ける水谷さん。……まあ、そうなるよね。さっきから時折、こうして怪しむように周囲に視線を向けているのだから。だけど、もちろんこれには理由があって。
と言うのも、二週間ほど前――
「……ねえ、葉乃ちゃん。これ、なんだけど……」
「ん、どしたの水谷さ……っ!!」
刹那、思考が……いや、呼吸が止まる。そして、そんなあたしに再び口を開き――
「……これって、葉乃ちゃんのこと、だよね……?」
そう、おずおずと尋ねる水谷さん。そんな彼女が眼前へと差し出したのは、スマホの画面――とある高校の女子生徒、
しばし、茫然自失とするあたし。……えっと、どういう、こと? そもそも、なんでスマホを……いや、そこはどうでもいい。それを言うならあたしだって持ってるし、そもそもそういう――スマホを所持しちゃいけないという校則があるわけじゃない。ただ、みんな自主的に手放したというだけの話で。なので、それはいい。それはいいのだけど――
「……ごめんね、こんな酷いことして。私だって、好き好んでこんなことしたいわけじゃない。でも……それでも、どうしても聞いておきたいんだ。これが、ほんとなのかどうか。そして、もし
「……宵渡、さんに……?」
「……いや、この言い方は流石に駄目だよね。同じ高校の――それも担任の先生なんだし、関わらないのは物理的に無理なわけだし。だけど……必要以上に、て言うのかな? 宵渡さんは、私の恩人なの。何の誇張もなく、今の私があるのは宵渡さんのお陰――私は、宵渡さんに救われたの。だから、葉乃ちゃん――貴女と一緒にいることで、宵渡さんの立場が悪くなるのは許せないの。言いたいこと、分かるよね?」
「…………」
すると、困惑するあたしをじっと見つめそう口にする水谷さん。彼女が、どこまで把握しているのかは分からない。それでも、きっと間違いないであろうことは……彼女が、例の視線の主だということ。そして、どうやら彼と一緒にいることが許せないみたいで。恩人、と言っていたけど……きっと、彼女も彼のことを――
……まあ、それは措こう。それよりも、まずは返事を――この書き込みが事実であるかどうかに対し、きちんと返事をしなくては。そういうわけで、
「……うん、本当だよ。あたしは――人を殺したの」
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