続!!続!!妻を好きで!好きで!仕方ないんですけど!!

彼方希弓

第1話 初恋の人

 なぜこんなにも、俺は、中野柚希先輩のことが忘れられないんだろう……

 

 先輩が卒業して、俺は、剣道に全身全霊をかけた。

 全国大会に出られたら、応援に行くからね、って言葉を信じて。

 先輩に会いたい一心で、剣道に明け暮れた。

 幼稚園児の頃からやってるけど、こんなにも真剣に剣道と向き合ったのは初めてだった。


 念願叶って、俺たちは全国大会に出場することができた。

 OB・OGの先輩方が大勢応援に来てくれた。

 だけど、中野先輩が姿を見せることはなかった。




 高校の卒業式の日に、中野先輩がバイトしている駅ビル内の花屋に会いに行った。

 ただ単に、先輩の顔が見たかったのと、高校を卒業した俺を見てもらいたかった。

 もう高校生じゃなくて、大学生になる。

 1個年下ってゆうのは、一生変わらないことだけど、でも、大学生とか、社会人とかだと、1個の違いって、あんまり気にならなくなるんじゃないかな。



 卒業式が終わってすぐ、そのまま先輩の元へ向かった。

 店に先輩の姿をみつけた。

 居てくれて良かった!!


「中野先輩!」

 と、後ろから声をかけた。


「えっ!倉田くん!

 わ~久しぶり!なに?偶然?」


 これが1年ぶりの会話だ。


「いえ、山下に聞いて。

 花束、プレゼント用にしてもらえますか!」


「あ、はい。 

 なに?彼女にプレゼント?あっ、今日卒業式?」


「あ、はい」


「どうゆう感じの花束がいいの?」


「えっと、先輩が好きな感じで」


「え~~、そうゆうの難しいな~。

 じゃ、可愛くつくるよ!ブリブリでね!」


 そういうと、先輩は何種類かの花を選んで、話しながら器用に花束をつくっていった。


 俺はただ、先輩の手もとを見ていた。

 白くて細くて長い指。

 きれいだな。


 竹刀を握る先輩の手もとはよく見ていたけど、花束を作るその手もとは、優しくてしなやかだった。


「倉田くん、全国大会おめでとねー!!すっごいよね!全国大会出れるなんて!羨ましい!

 よく頑張ったね!!」


「いえ、そんな……」

 誉められた。

 ずっと、欲しかった言葉……


「はい。出来たけど、これでいい?」


 えっ?

 こんなに早いんだ?

 花もリボンもラッピングも、ピンク系の女の子らしい花束だった。


「ありがとうございます。おいくらですか?」


「いいよ!私からのプレゼント!

 去年、卒業式にお花貰ったしね!そのお返し!

 はい、どうぞ!

 倉田くん、卒業おめでとうございます。

 お疲れ様でした」



 今まで、俺に向けられたことのないとびきりの笑顔でそう言われ、ドキドキした。


 なんかその瞬間、告白するなら今しかない!!って思った。

 俺は、神奈川県の大学に行くから、長野を離れる。

 この先いつ会えるだろうか。

 告白しなくちゃ!!

 今!!


「あ、ありがとうございます!

 あの……先輩、先輩は、今……」


 俺が言いかけたその時、


「ね〜〜!!もしかしてだけど〜〜、後輩くん 今 

 告白しようとしてなかった〜〜?

 オレのオンナに!!」


 えっ?

 なんで?

 須藤桂吾!!


 サラッと、柚希を抱き寄せキスをした。


「やめろ!!」


「あははっ!!やめろって なに?

 ってか、最初から、この子は オレのモノだけどな!!」





 ガバッと起き上がり、ソファから落ちた。


 痛ってーー!!


 ってか、夢だった!!

 よかった〜!!


 いつの間にか、ソファで眠っていたのか。


 なんで、こんな夢をみたのかって、理由はわかってる。


 須藤桂吾からのラインに動揺してるからだ。




『明日くる?』


 明日くる? とは?


 これは、俺と柚希と須藤桂吾の3人のグループライン。

 俺に聞いてるんじゃなくて、柚希に聞いてるんだよな?


『あの、須藤さん、すみません。

 既読1は、俺です。

 今、ゆきパート行ってて、パート中はスマホいじれないって言ってるので、夕方にならないと見ないかもです。 

 あの、明日って?』


『そうなんだ〜。いや、明日、うちに来るなら時間知りたいな〜って思ってさ~』



 えっ?なに?

 どうゆう状況?


 『ま、いいや。

 このあとオレもスタジオ入っちゃうから、スマホいじれないし。

 ゆきちゃん あとで、メッセージ入れといて〜

 じゃ、倉田くん またね!!』  


 そう言われて、動揺のあまり、寝落ちした……

 で、あんな夢をみたんだ。


 うち来る?って……

 つまり……


 ソファの下に落ちていたスマホを拾い上げて見た。


 えっ?

 気がつかなかったけど、柚希からの着信が10件。


 ラインを開いてみた。


『けいご!!ちょっと!!言い方!!バカじゃない!!』  

『とおる、電話出ないね……寝てるかな?』



 頭が回らないな……

 だから、つまり、なんだ?

 須藤桂吾と、つきあってるのか?








 

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