第2話私は吐き気をもよおした。

今日も私は彼女を監視しはじめた。


お風呂上りにノンアルコールビールを持ち

自室へと入る。


妻との会話はほとんどない。


他の教授連中にも聞いてみたが

どこも同じようだ。


よく外国映画で

「愛している」

なんて言葉が使われるが

あんなものは映画だけの世界だと思っている。


パソコンを立ち上げる。

今日はすこしもっさりとしている。


あーそうか。

セキュリティソフトが起動しているのか。


早く監視を始めなければ

少し気が焦る。


彼女が映っている。

今日は晩御飯を食べているようだ。


なにを食べているのかな?


サバの味噌煮の缶詰とパックご飯

それにインスタントの味噌汁。


なんともうら若き女性には寂しげな食卓だ。


こんどコンビニでスイーツでも買って

差し入れてあげよう。


私はたまにゼミ生に

コンビニの新作のスイーツをプレゼントする。

少しは若い人たちの流行を知らなければいけない

そう思うのだ。


おや

彼女が…

画像が荒れているな。


えっ。

どうした。

やめろ。やめてくれ。

だめだ。通報しよう…


えっ通報。

いやダメだ。

通報なんてできない。


この状況をどう説明する。


ただの盗撮犯じゃないか。


あっ

リビングが真っ赤に染まって

彼女が倒れている。


うん…

犯人がこちらに向かってきた。

えっ監視がバレたのか?


なにか言っている。

少しボリュームを上げよう。


うん聞こえない。


「お前がだれかわかっている。次はお前だ。楽しみにしている」



そのまま画像は途切れた。



えっなぜ?

私の存在がわかった???


だめだ。

落ち着こう。


どうしたらいい。


深呼吸をしよう。


そうだ。

まずはパソコンを閉じよう。

あーパソコンが閉じない。

そうか…

更新か。


なんてことだ。

気が焦る。


次はお前だ―


と言っていたな。

なぜわかった。

いや私が設置したことは

わからないはずだ。


いや

それより

彼女は大丈夫なのだろうか。

真っ赤だったな。


救急車が到着するまで約8分

あの量だと10分がギリギリだ。

彼女のマンションは10階建ての8階

エレベーターが故障しやすいと言っていた


さっきから何分経っている?

多分5分以上は…


あーもうダメだ。

彼女は助からない。


なんてことだ。

彼女を監視していたのに

守ることはできなかった。


犯人は誰なんだろうか?


本当に次は私なのだろうか…


だめだ。手が震える…

こわい。


あーごめんよ。A子

ごめん。先生君を救えなかったよ。

ずっと見ていたのに。。。

あ―――――


ウェ――――


私は夕ご飯とノンアルコールビールをすべてぶちまけた。

糸こんにゃくの残骸が

悲しく浮いていた。


それはまるで私の未来を暗示するかのようだった。


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