第3話
満腹になったノンは再び部屋に戻って椅子に座り、しばらくぼーっとしていた。ふと目に入ったポッケの中身が気になったのでひょいとひっくり返す。
「あにゃ!?」
ポニーテールがはねる中、ドドドドドドドドッとものが落ちてきて、ノンはひっくり返った。その間にもどんどんものが溢れて、ノンを埋め尽くしていく。
「何事です、か…?」
大きな物音を聞いて慌ててやってきたメアリーは、その様を見て驚いて固まってしまった。溢れてきたものの隙間から唯一見えている腕が掴んでいるポッケから、またひとつ、ポトリと落ちた。
「た、助けてください〜!」
「わわっ今助けます〜!」
くぐもったノンの声に、メアリーはガサガサとものをどけてノンを探した。しかし山になっているものが多すぎてなかなかノンが見当たらない。
十分ほどしてやっとノンを掘り出したメアリーは、疲れ果ててぐったりと横になった。ノンもまだまだ崩れてくるものをどかしながらため息をつく。
「…この量をどうやって集めたんですか?」
ノンは唸りながら、過去を思い出した。なんでも入るから、買ったもの採取したもの見つけたもの落とし物全てポッケの中に入れた気がする。そしていらないものでも、いつか、もしかしたらとポッケの中に放り込んでいた。
「…かくかくしかじかで?」
「それで伝わるのはどこかの異邦人だけですよ!」
意味もわからず、メアリーは突っ込んだ。
「ん〜…成り行きで?」
「それも通用しません!」
メアリーはため息をついた。さっきからなぜこんなにたくさん集めたのかと聞いているのに、まともな答えが全く返ってこない。
「…もういいです!とりあえずいらないものは捨てる!使うものだけ入れる!」
そろそろ敬語をつけるのも疲れてきたメアリーの言葉に、ノンは首を傾げた。山になっているものをチラリと見て、首を振る。
「全部いるもの!捨てる必要なんてないんですよ!」
思わず絶句するメアリー。まさかの全て必要である宣言。
「あれもこれもそれもどれも全部いつか使うかもしれないやつなんです!」
「いつかなら売ってしまえばいいでしょう!」
「これは私が人生で出会った、まさにいちごがいちえんのものなんです!希少なんです!」
「それを言うなら一期一会!」
はー、はー、と肩で息をしながら、二人は床に倒れ込んだ。ノンは普段は一人旅で話すことに体力を使うなんてほとんどしたことはなかったし、メアリーはここまで頭を使って大声で会話し続けるなんて経験はなかったのだ。
「…とりあえず、片付けましょうか。」
冷静になったメアリーの言葉に、ノンは頷いた。
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