第45話 気獣捕獲計画

ハリー・ウィルソンに出し抜かれた気獣士達は、彼が向かったと思われる沖合いの貨物船に目を向ける。

いきなりの爆音と共に船には紫炎が上がっていた。


「何だ!?」

「セイヴァースの船が炎上してるわ…。」


ヒロノスケとレイランの声から察したソニアが弱々しく呟く。

「紫の炎…奴が自らこの島に…。」

「おい!あれはお前が言ってたブラック・ウッドの幹部クラスの仕業なのか?」

ユーリーに頷きながらソニアは続ける。

「あの男が来たからには…全員島から脱出するのをお勧めする…。真の闇の気獣士の力は私達とは次元が違うのだ…。全員倒され、皆ブラック・ウッドの兵士として洗脳されるだろう…。」

「は?何でうちらが逃げなきゃなんないのさ…。ブラック・ウッドが犯罪組織だってんならどのみちぶっ潰さないとだろ?」

ユーリーの自信の言葉にレイランも同意するように続く。

「ええ。ブラック・ウッドの壊滅に続くって言うなら今回以上の報酬を獲られそうだし…。」

そして沈黙を守ったまま燃える船を見つめるヒロノスケにユーリーがけしかけた。

「あんたはどうすんのさ?」

「凄まじい気力の燃焼だ…。この獲物、俺が頂くぜ。」

ヒロノスケは早くも銀のオーラと共に狼の気獣聖霊を現した。

「勝手な事言ってんじゃないよ!どのみちそいつを倒さなきゃ報酬には届かないって事だろ?だったらあたしがやるさ!」

ユーリーも金のオーラと共に豹の気獣聖霊を背後に現した。

二人の様子を見ながらレイランも笑みを浮かべる。

「やはり最後は私達の競い合いになりそうね。」

白金のオーラが龍の気獣聖霊を出現させ、砂浜を風が舞う。

「フッ、愚かな…。三人でもあの男には敵わない…。報酬どころの騒ぎではない…。」

ソニアは三人を愚かと笑いながらも残り僅かな気力オーラと共にシベリアンタイガーの気獣聖霊を出現させ、警戒する。


紫炎を上げたセイヴァースの貨物船がやがて傾き、爆発と共に沈んでいく。

しかし四人はそこから真っ直ぐ海岸目掛けてやって来る巨大な黒い影に警戒した。

「く、来るぞ!」

ヒロノスケの声と共に巨大なワニが海面から飛び出し、黒い靄と共に人の姿へと変化した。


「こんなにも息の良い気獣士達が揃っているとは…。我らが主もお喜びになるだろう…。」

ダミアンは前髪から見える右目を紫に光らせながらヒロノスケ、ユーリー、レイランをそれぞれ見た上でその傍らのソニアにも目を向ける。

「ソニア…どういうつもりだ?ブラック・ウッドの会員でありながら私に楯突くつもりじゃあないだろうな?」

「私はすでにこのゲームに敗退した…。どのみち始末するつもりだったんだろ?」

ソニアは恐怖を闘志に変えた眼差しでダミアンに言い放つ。

「始末?お前ほどの女を始末するなど…実に惜しい事だ…。そんな野暮な真似はしないさ…。ただ私のペットとしてずっと可愛がってやるだけだ…。」

ダミアンの言葉が逆にソニアの恐怖心を煽るようだったが、そこでヒロノスケが割って入る。

「俺達を無視して盛り上がるなよ…。そのロシア女をペットにする前にお前はワニ革のハンドバッグになっちまうだろうぜ。」

「志摩寛之介…戦場の狼か…。お前はこれまで泳がされていた事を思い知るだろう…。我らブラック・ウッドがその気になれば貴様は消されていたのだから…。」

「な、何だと~っ!」

ダミアンの挑発にいきなり飛び出すヒロノスケ。

「あ!馬鹿っ!」

「待ちなさい寛之介君!」

ユーリーとレイランの声も彼には届かず、ヒロノスケは徒手格闘でダミアンに飛び掛かる。

高速化して飛び掛かるヒロノスケの拳と蹴りが次々にダミアンに放たれたが、一撃も掠りもしなかった。

「や、野郎…。長身の割になんて速さだ…。」

「スピードだけではない…。」

ダミアンが言うと、ヒロノスケの腹部に衝撃が走り、彼は大きく吹っ飛ばされる。

「ぐはっ!い、いつの間に…。」

「ヒロノスケ!あたしにも見えなかった…。」

「闇の気獣士…とんでもない奴が現れてしまったようね…。」

ユーリーとレイランもかつてない敵を前にたじろいでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る