第43話 闇の気獣士
レイモンドを倒しつつも全ての気力を使い果たしたユキリナは、輝石を握りしめながら爆睡している。
時間は前後し、爆発的な気力オーラの気配を察して戦いを中断したヒロノスケとレイランが島の反対側からユキリナの元に現れる。
「とてつもない気力のパワーだったけど…。」
「どうやら戦いは終わったようだな…。」
二人は砂浜で大の字で寝ているユキリナを目にし、疑惑を感じる。
「こいつはさっきの素人娘じゃないか…。まさか爆発的な気力を発したのはこいつか?」
「今は全く気力を感じないわ…。全てを出し尽くしたようね。」
「こいつが…。さっきの爆発力は俺達をも凌駕する勢いの気力だったぞ…。」
「恐らくだけど…彼女はまだ自分の中の気獣聖霊の力に気付いてなかったんじゃないかしら?」
「フフッ、だとしたらとんでもないダークホースってわけか…。」
二人は無邪気な寝顔を見せるユキリナが手にする輝石を目にする。
「しかし、これも勝負の世界…。輝石は頂く…。」
ヒロノスケはユキリナから輝石を奪おうとするも、レイランがすかさず手刀を放ち、ヒロノスケと対峙する。
「だったら先に私達の決着をつけないとね…。」
「くっ、中華魔女め…。」
ユキリナそっちのけで再びヒロノスケとレイランの肉弾戦が開始される中、先の戦いでレイモンドに敗れたハリーがユキリナから石を奪った。
「ユキリナ…悪く思うなよ。こいつは俺のお宝なんでな…。」
そのまま逃げようとするハリーをレイランの竜巻が吹っ飛ばす。
「ぐあっ!」
「おっと、誰かは知らないけどどさくさ紛れに何してるのかしら?」
倒れるハリーの前に降り立つレイランは、腰に両手を当てながら迫った。
「くっ、風を操る気獣士!?」
「こっちもいるぜ…。」
ヒロノスケが粉塵火薬から手榴弾を造形しながらやって来る。
「へへ、参ったな…。これほどの気獣士がこの島に集まってるとはよぉ…。」
既に感電のダメージと気力消失で立ち上がれないハリーは、輝石を宙に放り投げる。
「何しちゃってくれるのよ!」
「貴様!」
ヒロノスケとレイランは同時に空中へ飛び上がり、空中で拳と蹴りの打ち合いとなるが、それが偽物であると気付いた時にはハリーの姿は無くなっていた。
「あ、あの野郎!」
「水酸化ナトリウムで造形されたガラス玉だわ…。」
二人を出し抜いたハリーは、最後の気力を振り絞り泡によって身体を覆い、海に紛れて逃げていた。
「へへ、二人共気獣能力は強そうだが、頭は俺の方が上手だったな…。」
ハリーはそのまま沖に停泊しているクルーザーに泳いでいく。
「く、くそ!中華魔女!お前さえ邪魔しなければ…。」
「それはこっちの台詞よ!」
再びいがみ合う二人だが、その間を遮断するように熱閃光が砂浜を切る。
「勝手に抜け駆けしといて輝石を奪われてちゃ世話ないね!」
打ち倒したソニアを鎖で縛り上げたユーリーがその場に颯爽と姿を見せる。
「金髪女!?」
「ユーリー!?くっ、厄介な奴が来てしまったようね…。」
ヒロノスケとレイランは、向かって来るユーリーにそれぞれ身構えたが、ユーリーは両手を上げて戦う意志が無い事を示す。
「待ちな!ここで乱闘してる場合じゃないんだよ。」
ユーリーは二人を収めるように警戒を解かす。
「どういう事だ?あのロシア女との戦いでてめぇが気力を失ったからそんな事をほざいてんじゃねぇだろうな?」
「馬鹿なの?おめぇなんですぐ倒せんだよ狼野郎。」
「な、なんだとぉぉ!」
「すぐ熱くならないでよヒロノスケ君…。」
ユーリーとレイランに挟まれ、ヒロノスケは思わず返す言葉を失う。
「で、乱闘してる場合じゃないってのはどういう事なのかしら?」
レイランは一旦冷静にユーリーの話に耳を傾ける。
「ああ、あのロシア女に話を聞いたんだが、どうもセイヴァースの狙いはあの石ではなく、うちら気獣士をこの島に集める事だったみたいなのさ。」
「私達をこの島に?」
「輝石を手に入れる為じゃないのか?」
ユーリーは鎖で縛り上げたソニアを二人の前に投げ出した。
ユーリーに倒されたソニアは、もはや気力もなく、立って居られないようだった。
「もう一回聞かせてみな。」
ユーリーはソニアを立たせて煽る。
「くっ、私が話したところで状況は変わらない…。セイヴァースは私やクリストファー、フェイロを闇の気獣士と知ってここに誘い込んだみたいだ…。」
「闇の気獣士?一体何だそれは?」
ヒロノスケの問いにソニアは続ける。
「私達をここに送り込んだ真の顧客はセイヴァースではなく、闇の秘密結社『ブラック・ウッド』なのだ…。」
「ブラック・ウッド?聞いた事があるわ…。武器や麻薬を世界にばら撒き、その金で人体実験を行うと言われている闇組織とか?」
機密工作員であるレイランは、世界の犯罪の裏で暗躍するその組織の名を知っていた。
「ブラック・ウッドは既に気獣聖霊について把握済みであり、優秀なる気獣士を会員として迎えてブラック・ウッド専属の戦士にしようとしたわけだ…。」
ソニアは力なく俯きながら言った。
「それで正規の気獣士である俺達を捕獲しにお前とあと二名が派遣されたわけか?」
ヒロノスケの問いにソニアは顔を上げる。
「その筈だった…。しかし、三名共に敗れた今、ブラック・ウッドの真の幹部である闇の気獣士がこのゲームの参加者を狙ってくるだろう…。」
ソニアの話にヒロノスケもレイランも内心穏やかでは無くなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます