第8話 囚われの狼

砂漠を走る志摩寛之介。

彼はこの先に逃げたテロリストの集団を追っている。


だが、急に背中に走る違和感。

「何だ?この獣の気配は?」

見返ったヒロノスケの前に獰猛な巨大な豹が唸りを上げて襲い掛かってきた。

「うわぁぁぁっ!」

ヒロノスケは豹と取っ組み合い、砂漠の斜面を転がり落ちていく。

「くっ、離しやがれ!」

ヒロノスケは豹を巴投げて舞った粉塵を火薬にして爆撃しようとするが、気獣を発動させるどころか気力を集中出来ない。

「な、何故だ!?気力が…。」

戸惑うヒロノスケに豹が容赦なく飛び掛かって来る。

豹の姿は何故かブロンドの美しい美女に変わっていく。

「これは…殺られる!」

ヒロノスケは豹の美女から必死に逃げるが、砂漠地帯の途中の流砂に足を取られて吸い込まれて行く。

「く、くそ!」

足掻くヒロノスケの前に流砂の中心から姿を現す巨大な白い龍。

「うわぁぁぁっ!な、何だこいつは…。」

龍の上半身が黒髪の美しい美女に変化し、ヒロノスケを喰らおうと襲い掛かってきたところでヒロノスケは、夢から覚める。

「くっ、夢か…。ん?なにぃぃ!?」

目が覚めたのも束の間、ヒロノスケは超合金の鎖によって身動き出来ないくらいに拘束されていた。

「な、何だこりゃぁぁ!」

踠きながらも彼はさっきの夢がまんざら夢でもない事を思い返した。

「あ、あの女共の仕業か!?」

彼はどこかの部屋の一室に監禁されているようだった。

そこに話し合う女の声が近付いて来た。

ヒロノスケは一先ず寝た振りで様子を伺う事にした。


「だからあたしがあいつを追い詰めたんだから半分はあたしも貰うべきだろ?」

「それじゃ商売とは言えないでしょ?仕事に手間取るあなたに代わって私が彼を捕らえたわけだし。」

「あたしもろとも風で吹っ飛ばしたくせに…あんたこそ営業妨害じゃん!」

紛れもない女豹ユーリーと龍女麗蘭であるとヒロノスケは確信した。

二人は彼を捕らえた報酬の件で揉めているようだった。


(この女共…人を商品みてぇに言いやがって…。目に物見せてやるぜ…。)


寝た振りをしながらヒロノスケは、入室してきた二人の隙を伺う事にした。

現時点で睡眠を取り、体内の気力もフルパワーに近い。

だが、彼も傭兵として考える。

敵は自分と同等の力を持つ気獣士であり、それを感情に任せ、二人同時に相手にするのは賢い選択とは言えない。


(どちらかは俺の様子を確認する為に近付いて来るはず…。どちらか一人を捕まえてもう一方にも抵抗を止めさせれば…。う~む、それではまるでテロリストのやってる事と変わらんしな…。)


そんな事を考えてるうちにユーリーと麗蘭は、自分が横たわるソファーベッドに近付いて来ていた。

二人共あんな狂暴な気獣聖霊に取り憑かれている割には女優やモデル顔負けの美女である。


「あなたが後先考えず、ターゲットに接触するのがいけないのよ。」

「あたしはこいつを倒す気で行動してたんだ!それこそボロ布纏ってテロリストの人質にまでなってさ。」

「それはご苦労様ね…。でも私はその前からこの子の活動範囲をデータ解析して位置を割り出していたからあそこに辿りつけたのよ。前段取りがあなたと違うわけ。」

「このガキをずっとストーキングしてたって?年増女の執念って奴?」

「まだ23よ!」

年増と言われ、冷静沈着だった麗蘭の顔が強張る。

「年増には変わらなくね?」

「あんたこそ21にもなって少しは大人になったら?まだこの子の方が傭兵業としてちゃんとやってるじゃない?」

「あたしは一応米軍中尉にまでのしあがってんだよ!こんな野良ガキと一緒にすんな!」

二人はヒロノスケの両側に座って口論を続けるが、いちいち自分が出汁にされてる事に苛ついてきていた。


(この子?野良ガキ?この女共…好き勝手言いやがって…。)


ヒロノスケの銀のオーラが放出され、彼が起きている事に気付くユーリーと麗蘭。

「あ!こいつ起きてんじゃん!」

「私達の隙を伺っていた!?」


「バレちゃ仕方ねぇ!」

ヒロノスケは束縛されながら飛び起きて超合金の鎖を爆破して脱出する。

立ち上がるヒロノスケに麗蘭とユーリーもそれぞれ警戒し、身構える。

「あんたが突っ掛かるせいで起きちゃったじゃない!」

「あたしのせいにすんな!何が気獣士でも壊せない超合金だよ…あっさり破壊されてんじゃん!」

「俺を無視して喧嘩してんじゃねぇ!」

「そもそもおめぇが内戦荒らしなんかしてんのが悪いんだよ!」

「そうよ!悪いのはあなたよ!」

いきなりタッグを組み出した二人にヒロノスケは、悪夢を思い返す。

「ったく、面倒くせぇ女共だ…。」

三人はそれぞれ気力オーラを放出し、一触即発になるが、そこにライザス・ウェルザーの代理者であるマコルが現れて一礼する。


「皆様、ここはうちの管理の建物ですので、死闘はご遠慮願います。」


「何だこのガキは?」

「あ、志摩寛之介様…おはようございます。」

一礼するマコルの笑顔にヒロノスケは、かつてない不気味さを覚える。


「こいつが暴れたらうちらも手加減は出来ないんだよ。」

「マコル、巻き込まれたくなかったら離れてなさい。」

「その通りだぜお嬢ちゃん…。」


三人の間に火花が散ったが、マコルは笑顔でその間に入る。


「まぁまぁ、皆さん…。ちゃんとお話しましょう。賞金総額について…。」





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