第22話 再会と別離
地元に帰ってきて何年かして、いつのまにかもう一度みちるちゃんと友達になっていた。
実は、みちるちゃんとは、中学は校区が一緒だったこともあり、クラスは別だが同じ学校に進み、その後高校も、同じ学校に進学していた。高校三年生の時だけ、同じクラスになり、そのときに、小学生の時以来、随分と久しぶりに話をした。
あらゆる人のケータイ番号やアドレスが消えているのに、社会人になってからも、なぜかみちるちゃんとは再会できて、一緒にランチをしたりしている。久しぶりの再会に気恥ずかしく思うかなをよそに、みちるちゃんの目は輝いている。
かなに、子供の頃と変わらない笑顔を向けてくれている。
それにしても、失礼だが、みちるちゃんは、あれほど努力家で才能があったのに、どうしてその道に進まなかったのだろう?その分野の学校にも行っていたのに、なぜ。
みちるちゃんは、今は、あるバーの店員をしていた。美しい容姿は健在なので、きっとお客さんも喜んでいるだろう。
彼女はでも、本当は、デザインの仕事がしたかったはず。
巧みに人の間をかき分ける思考力と行動力がないと、素質だけではまっすぐ目的の場所にたどり着くことは難しいということだろうか。
ある時、みちるちゃんは、バーに来店されたお客様に気に入られて、新しい店を立ち上げるから、うちに来ないか?と誘われたという話を、かなにしてきた。
「うちの店に来てくれたら、ただで海外に連れて行ってくれるって言ってくれたの。なかなか海外にただでなんて行けないし、いいじゃんと思って」
「え?ただで海外?その人危なくない?」
みちるちゃんは、笑っている。
「やめたほうがいいよ」
そうしつこく伝えたところ、しばらくして彼女と音信不通になった。何か、利用される気配を感じていたが、かなから見た彼女は幸せになりたい人ではないので、そのままついていくのだろう。という予測ができた。
幸せになることを自身に許可して、正しくしたたかに現実を計算して進まなければ、幸福には辿り着けない。周囲の人間を巻き込んで後悔するという現実が待っている。良心だけでは、守れないものがある。生きると決めて、幸せを望んで、それにはどうすればいいのか?その辺りは、もう淡々とした理屈でいいのだ。あなたが、たどり着いた場所で笑顔ならば。
でも、あなたの本質は、かなとは違うから、できないんだよね。みちるちゃんは、かなより真心の強い人なのだ。胸の真ん中に心があって、その心のせいで逃げるべきところで判断できない人なのだ。
あなたが思い描く未来は、一体どのようなもの?形見えないものの輪郭を宙でなぞったが、かなにはわからなかった。夜の細い三日月を見ては、こちらがかなの心で、満月がみちるちゃんなのではないかと思った。
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