第二章 バトルギア起動! 初めてのバトル

第1話 楽しみすぎて

 ——ぜんぜん、眠れなかった。


 今日は、堅翔とけん玉バトルをする日だ。バトルギアを使って、はじめて本格バトルができる。


 どんなパートナーが出てくるんだろう?


 堅翔とは、どうやって戦おう?


 布団に入ってからも、頭の中でバトルの想像がぐるぐる回っていた。


 目を閉じれば、まだ見ぬパートナーの姿が思い浮かんで——考えれば考えるほどワクワクしてきた。


 眠れなくなって、気づいたら朝になってた。


「剣城、おはよう——って、眠そうな顔してるわね。さては、今日が楽しみで寝られなかったんでしょ?」


 朝ごはんの準備をしていた母さんが、ニコッと笑って言った。


「……うん。ちょっとだけ」


 夜のあいだにけん玉をして、体をつかれさせようと思ったけど、逆に夢中になってしまって、ますます眠れなくなった。


 朝になってようやく眠くなってきたけど——今さら寝てるヒマなんて、ない!


「堅翔と十時に栄永公園で待ち合わせなんだ! 顔洗ってくる!」


 俺は洗面所へ走って行って、顔に冷たい水をバシャバシャッとかけた。


 「っ! ……冷たっ!」


 けど、そのおかげでちょっとだけ目が覚めた。


 二回、三回と顔を洗って、タオルでゴシゴシ拭いてからリビングに戻ると、テーブルには母さんが作ってくれた朝ごはんが並んでいた。


 炊きたてのご飯に、あつあつのお味噌汁。こんがり焼けた魚と、ふわふわの卵焼き。


 ——いいにおいだ!


 逢坂家の朝ごはんは、いつもご飯だ。たまにはパンが食べたいけど、母さんが「パンは太るから」って買ってくれない。


 文句は言えない。というより——こんなにおいしそうなんだから、文句なんてあるわけない!


 椅子に座って、手を合わせる。


「いただきます!」

「うん、しっかり食べて、がんばっておいで!」


 母さんがまたニコッと笑ってくれた。



 朝ごはんを食べ終わって、部屋で着替えを済ませる。


 白いパーカーにジーンズを着て、大好きな帽子を被れば準備万端!


 時計を見ると、時間は九時を少し回っている。だけど、家から栄永公園までは歩いても十分くらいで到着できる。


 ——早く時間にならないかなぁ。


 勉強机に置いてあるバトルギアの箱をそっと持ち上げる。箱を開けると、腕時計型のデバイスが入っている。これがバトルギアだ。


 まだ起動していないけど、見ているだけでドキドキしてくる。


 ——あぁ、どんなパートナーと出会えるんだろう。


 堅翔のパートナーを見せてもらったことがある。大きな盾に槍を持ったゴウって名前のパートナーだ。


 バトルも見せてもらったけど、盾で攻撃を防ぎながら槍で攻撃していてめっちゃカッコよかった。


 先にちょっとだけ、起動だけ——でも、堅翔の前でって決めたんだ。


「やっぱりダメだ!」


 そう言って、慌てて箱を閉じた。


 見ているとやりたくなっちゃうから、ショルダーバックの中にしまう。けん玉も一緒に入れて準備万端だ。


 家にいてもムズムズするだけだから、先に公園に行ってけん玉の練習をしよう。


 ショルダーバックをかけて、玄関に向かう。


「母さん、行ってきます!」


 靴を履いていると、キッチンから母さんがやってきた。


「行ってらっしゃい。堅翔くんとのバトル頑張ってね!」

「うん!」


 その声に、俺は自然と笑顔になる。


 靴を履いて立ち上がる。


「いってきます!」

「お昼ご飯の時間には帰ってくるのよ!」

「わかった!」


 ——よし、行こう。今日は、はじめてのけん玉バトルだ!


 どんな勝負になるかは、まだ俺にもわからないけど、すごく楽しみだ。

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