けん玉バトル バトルギア!

赤松 勇輝

第一章 夢が現実に!? 運命の出会い

第1話 言いたいけど言えないこと

 TV画面の向こう側で、両手に剣を持った着物を着た剣士が、剣に炎を宿して斬りかかった。


『出ましたー! 焔藤和馬えんどうかずま選手とムサシの必殺技『焔斬崩撃えんざんほうげき』ッ!』


 炎を宿した剣による攻撃を受けた相手は膝をついて、そのまま倒れ込んだ。


『試合終了! 勝者、焔藤和馬選手だッー!』


 実況の声を受けて、観客がワーッと盛り上がった。テレビで見ているだけなのに、俺も会場にいるような感じがする。


 ——すげえ。和馬……かっけえ!


 けん玉バトルの試合を見ていると、胸が熱くなる。


 バトルギアを使って、けん玉の技を成功させて、キャラを動かす。プロの剣術師けんじゅつしは、テレビにも出るようなヒーローだ。


『けん玉バトルは十歳から始められる! TVの前の君も、目指せ剣術師ッ!』


 実況の声に俺は手をギュッと握った。


 俺も先月の三月で十歳になった。だから、けん玉バトルを始められるんだ。


 ——だけど。


剣城つるぎ、ご飯できたわよ——って、また隠れてけん玉バトルのテレビを見ていたのね!」

「いや、違うんだ! たまたまチャンネルが……」

「言い訳は聞きません! ご飯が冷めちゃうから早くきなさい!」

「……はーい」


 部屋を出ていく母さんの背中を見て、俺はため息をついた。


 ——俺だって、けん玉バトルをやってみたい。


 だけど、母さんはけん玉バトルが好きじゃないんだ。


 だから、買ってくれなんて言えないよ。


「……はぁ」


 もう一度ため息をついて、母さんが待つリビングへと向かった。

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