【40,000PV突破御礼】古医術で診療所やってたら医術ギルドに潰されそうになり、闇バイト先が魔王軍で魔族たちに溺愛されてます(R15)
第45話 元カノの人生相談に乗ってたらヤンデレの魔王の娘が暴走して診療所が壊れそうです(物理)
第45話 元カノの人生相談に乗ってたらヤンデレの魔王の娘が暴走して診療所が壊れそうです(物理)
夜の診療所は、ランプの明かりだけが柔らかく揺れていた。
「今日の当番は……エリシアか」
小さくため息が出る。
決して嫌いなわけじゃない。
ただ、正直……。
(一人で静かに寝させてくれ)
どうやってかわそうか。
いっそ、診療所を出るか。
そんなことを考えていた時、背後から声がかかる。
「……セレン、今日の当番は……その、私なんだけど。少し相談したいことがあるの」
振り向けば、エリシアが壁際に立っていた。 その表情はどこか真剣で、俺は思わず足を止めた。
とてもスキップしたいと言い出せる雰囲気ではない。
結局、二人で寝室に入り、ベッドの端に腰掛ける。
距離感がおかしい気もするが、だんだんと感覚が麻痺していた。
「……どうした?」
エリシアは迷ったように唇を噛み、それから小さく頷く。
「……その、医術ギルドを、やめようかと思ってるの」
「……は?」
不意を突かれた言葉に、俺は思わず声を上げた。
「あなたと一緒にこの診療所で人間も魔族も関係なく診療するようになって、私……なんだかとても満ち足りてるの。本当にやりたかったのは、こういうことじゃないかって。
でも、医術ギルドは、魔族の患者を診るなとか、あなたの治療法はギルドの基準に沿ってないとか……」
俺は言葉を失い、机に視線を落とした。 エリシアの気持ちは痛いほど分かる。
俺自身も、同じ葛藤を抱えていたからだ。
……だけど、エリシアにとって、それはいいことなのか?
「気持ちはわかるが……まあ、もう少しゆっくり考えた方がいいんじゃないか?医術ギルドは経済的に安定するし、魔族の診療所ってのも、地味に面倒ごと多い」
「そうね、あなたはいつも苦労してるわね」
「……悪かったな」
「冗談よ、でも相変わらず……優しいわね、あなたは」
その言葉に、俺は少し照れて目を逸らした。
エリシアはふっと笑って、ランプの光が頬を淡く照らす。
ふわりとした沈黙が落ちて、互いの吐息が重なるほど距離が近づいた。
エリシアの唇は、いつも濡れてふっくらしている。
誘い込むようで、俺はつい視線を逸らせなくなる。
エリシアが視線を上げ、かすかに囁くように言う。
「……ねえ、こうして二人でいると、不思議と落ち着くの。あなたといると、世界が静かになる気がする」
俺は不意を突かれ、言葉に詰まる。ほんの一瞬、胸が強く高鳴った。
──そのときだった。
エリシアの言葉が途切れた瞬間、遠くの廊下で何か重いものが倒れるような音がした。
直後、空気が妙に重たくなり、視界がかすかに歪むような感覚が走る。
俺は一瞬耳を澄ませ、心臓が高鳴ったが、何でもないと自分に言い聞かせる。
ドンッ!
重い扉が音を立てて開く。
振り返ると、そこに立っていたのは──リリスだった。
「……セレン……」
髪は乱れ、頬は紅潮し、瞳は熱に潤んでいる。
そして、彼女の背後で、空気の密度が変わっていた。
魔力だ。
尋常じゃない量の魔力が、今まさに放出されている。
「リリス? どうした、こんな時間に──」
「だって……あなたは人間ばかりみて、私を見ないから……」
低く震える声。
次の瞬間、部屋の棚がガタガタと揺れ、ランプがカタリと音を立てた。
薬棚の瓶がいくつもカシャリと音を立てて転がり落ち、床で派手に割れる。
さらに、壁にかけた装飾具が落ち、窓ガラスまでビシリと亀裂が走った。
ランプの炎が揺れ狂い、空気が震える。
まるで嵐の中にいるような錯覚すら覚える。
低い唸りが部屋に満ち、胸の奥まで響く。
「きゃっ!」
エリシアが小さく悲鳴を上げて後ずさる。
「ちょっ、待て待て待て!? お前、なんで急にそんなに!?」
(てか、俺にそこまで興味なかった様子だっただろ!?)
声を無視しながら、リリスはまっすに俺だけを見つめる。
「……セレンは、わたしを……捨てないよね……?」
「いや、そういう話じゃなくてな!? 家具が壊れる! 落ち着け!!」
魔力がさらに膨れ上がり、部屋全体がミシミシと音を立てた。 エリシアも慌てて立ち上がり、声をかける。
「リ、リリス! 待って、セレンは──」
「うるさい! セレンは……セレンは、わたしの……!」
リリスの声が掠れ、瞳が涙に濡れる。
このままでは部屋が吹き飛ぶ──俺は考えるより先に、リリスの体を強く抱きしめていた。
「落ち着け、リリス! 大丈夫だ、俺はここにいる!」
「……ほんとに……?」
「ああ、どこにも行かない」
リリスの体は驚くほど細く、抱きしめた瞬間に折れてしまいそうだった。
少し、痛々しかった。
鼓動が俺の胸に伝わり、熱と震えが重なって息が詰まるほどだ。
リリスの震えが、少しずつ収まっていく。
魔力の揺らぎが消え、空気が静かになった。
リリスは俺の胸に額を押しつけ、子どものように小さな声で呟く。
「……よかった……」
俺は彼女を抱きしめたまま、深く息を吐いた。
これは……。
治療すべきものが見えてきた気がした。
***
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https://kakuyomu.jp/works/16818792435685695540
現在、第4回「G’sこえけん」音声化短編コンテストに応募するため、スピンオフとしてヒロイン達のASMR回想録を制作しています。
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