第2章 ヒロインたちが同棲しはじめて心が休まらないし、また色々起こりそうです

第33話 ヒロインたちが押しかけてきて心が休まらない朝に、謎の来訪者が現れました

 夜明けの光が、仮修理の屋根の隙間から差し込む。

 灰色の空気が、まだ消えきらぬ焦げの匂いを撫でていく。


 俺は穏やかな気持ちで目を覚ました。

 ゆっくりとまぶたを開けると──


 やわらかな体温が、ぴとりと頬に触れていた。

 ラナだった。


「……ん、せんせぇ、おはよ♡」


 もぞもぞと布団の中で動く感触。

 柔らかな吐息とぴとっと頬に当たる体温に、俺は一気に覚醒した。


「ちょっ……なんで隣に……」

「昨日、夜寒そうだったから……♡」

「自分の布団で寝なさい」

「えー、せんせぇのとこが落ち着くのにぃ……♡」


 甘い魔力香が立ち上り始める。

 いかん、これ以上一緒にいたらやばい。

 俺は、布団を乱暴に跳ねのけた。


***


 廊下を歩いていると、どこからともなく現れる黒衣の影。


「おはようございます、セレン先生……」


 ヴェレムが滑るように寄ってきて、腰に手を触れる。

 やめろ、朝からやらしい触り方するな。


「用はないけど、用を作って追いかけてきました」

「トイレぐらい、一人で行かせてくれ……」


***


 台所へ逃げ戻れば、朝の光が古びた木のテーブルを照らし、アスリナが待ち構えていた。


「セレン……口、開けろ」

「なんで?」

つがいとは、そういうものだ。セレンには、強くたくましく育ってほしいからな」


 もう十分に育っているのだが?

 フォークを突き出され、「あーん」までされてしまう始末。


***


 何とか適当に理由をつけて朝飯を食い終わり、診療机に向かう。

 ようやく落ち着いたと思ったところで、今度はエリシアが静かに隣に座った。


「セレン……昨日の問診記録の整理についてなんだけど。あと、ちょっと相談があって。私じゃないんだけど……その、友達がね? もし仮に……前に別れた誰かと、やり直したいって思ったら……どうすればいいのかしら」

「あ──」


 いや、それは俺に相談するのはおかしくないか?


***


 そして、俺は大きくため息をついた。


「……なんか、心が休まらない……辛い」


 そのとき──。

 玄関から、ドサッと音がした。


「い、いったぁ……」


***


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