【40,000PV突破御礼】古医術で診療所やってたら医術ギルドに潰されそうになり、闇バイト先が魔王軍で魔族たちに溺愛されてます(R15)
第21話 夢魔に問われて惑う俺 ~先生、それは心と体、どちらの契約破棄ですか?~
第21話 夢魔に問われて惑う俺 ~先生、それは心と体、どちらの契約破棄ですか?~
飛竜レオナルトの背に乗って、魔王軍の砦へと向かう。
夜の風は冷たく、月は静かに空を照らしていた。
俺の中で渦巻くものは、怒りでも、悲しみでもない。
もやもやとした感情が、ただ静かに胸を占めている。
──それに、少しだけ嫌な予感がしていた。
塔の屋上に降り立つと、待っていたようにヴェレムが姿を現した。
「夜分にどうしました、先生」
「聞きたいことがある」
口から出た声は、思ったよりも低く、固かった。
「……本当に、俺を軍医長にするつもりだったのか?」
ヴェレムは少し目を細めて、わずかに肩をすくめる。
「当たり前でしょう。私が冗談を言うように見えますか?」
「だったら、答えてくれ」
俺は一歩、踏み出す。
「お前は、『医療行為の延長』と言った。
だが、俺が治療した蒼爪属……そいつが村の子供を襲ったと聞いた」
ヴェレムの表情に、わずかな陰りが走った。
「……蒼爪属。そんなはずはないのですが」
「聞く。俺が治療した患者は、人を襲うのか?」
「そうだとしたら、どうします? 契約を破棄しますか?」
その言葉を聞いたとき、俺の中で、首に巻き付いた細い指と、
かつて感じた命の危険が、鮮明に蘇った。
魔王軍は、平然と人を殺す──そう思っていた。
目の前の美女の顔を見て、冷たい汗が背を伝う。
目線の高さは同じだが、その瞳に見下ろされるような錯覚があった。
生唾を飲み込んで、それでも。
「……破棄する」
俺はその言葉を口に出した。
ヴェレムの瞳が細められた。 微笑が浮かぶ。
「……強いですね、先生は」
「正しさを貫けるほど、強くはない。
ただ、俺の手で治した奴が、子供を襲うのは──耐えられない」
ふと、間が空く。
「……我々、魔王軍でも、意見は分かれています。
人間と争いたい者、争いたくない者。
誰もが同じ方向を見ているわけではない」
「お前らは?」
「我々は、人間と争いたいとは思っていません」
俺はわずかに目を細め、もう一歩だけ踏み込む。
「魔王は? 人間と争いたいのか?」
ヴェレムの表情が、ふっと静かに翳る。
「……まだ、話すときではありません」
「だったら、はっきりさせよう」
俺は息を吸い、真っ直ぐに彼を見据える。
「治療を受ける者は、人間を襲わない──その契約を交わしてくれ」
ヴェレムは一拍、黙って俺を見つめた。
「……私の一存では」
「妥当な提案だとは思う」
「善処します。お約束はできません」
俺は少しだけ目を伏せる。
そのやり取りを終えたときだった。
風が吹き抜ける音の中、すっとヴェレムの姿が俺の間合いに入った。
そして突然、ヴェレムの手が俺の頬に触れた。
「っ……なにして──」
「……先生……。破棄すると言われて、私はどう感じたと思います?」
淡い声。それでいて、芯のある問いだった。
「本当はとても傷ついたのですよ?
私にとって先生は、思っている以上に大事な存在なんです」
その言葉に、思わず息を呑む。
その距離、わずか十数センチ。
見つめ合う俺たちの目線は、同じ高さにあって。
なぜか、彼女の瞳から目を逸らせなかった。
「先生って、ほんと、察しが悪いんですね……。
でも、そういうところ、嫌いじゃありません」
その声には、いつもの冷静さに混じって、かすかな照れと棘があった。
気づけば、胸の奥に小さな痛みが生まれていた。
「……ふざけんな」
俺は手を払う。
呪縛が解けた。
「……もう一つ、頼みがある」
「はい」
俺は息を整え、言葉を継ぐ。
「俺が治療した蒼爪属。名前は『ガロス・ジン』。
彼が本当に村の子供を襲ったのか調べてほしい」
ヴェレムは目を伏せ、わずかに頷いた。
「わかりました。調べてみましょう」
彼女の声は、いつものように冷静だった。
それが逆に、俺の中の怒りを冷ましていく。
「……それだけ伝えに来た。じゃあな」
背を向けたとき、ヴェレムの声が背中越しに届く。
「先生。……必要とされる場所に居てください」
振り向かなかった。
飛竜の背に乗り、夜空へと舞い戻る。
塔が遠ざかる。
「……急いでくれるか?」
飛竜レオナルトに声をかける。
なぜだろう、胸の奥に、ざわつくものがあった。
言葉にはならない。だが、妙に胸騒ぎがする。
冷たい夜風が、背筋をなぞるように吹き抜けた。
***
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https://kakuyomu.jp/works/16818792435685695540
(新作紹介)ゲーム開発者転移無双!俺つええですが、美女AIに溺愛されてます。
PvP、戦記好きの方ぜひ!
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