第2話
これ以上余計なことを考えたくなくて足早に改札を抜け出す
定期をかざすと右手につけた腕時計が目に入る
人身事故などなかったかのようにいつもの時間を示していた
改札横に遅延証明書が置かれていないことが僕に現実を突きつけていた
駅を出て10分ほどで学校に到着する
僕は早く学校でこの出来事を友人に話して自分だけがおかしいわけではないと証明して欲しかった
自然と僕の歩みは早くなっていった
陰鬱な気分のままクラスに着きそれを振り払うように扉を開けた
僕は違和感を感じた
今までは友人というほど親しくはなくともクラスメイト同士挨拶を交わしていた
だが今はどうだろうか
友人はいつも通り声をかけてきて挨拶を交わす
クラスメイトはまるで誰も来ていないかのように反応することもなかった
僕は動揺していた
昨日と今日で一体何が違うというのだろうか
「どうしたんだ?ぼんやりして早く席に座れよ」
そう言われて後ろ髪を引かれながらも席についた
そうだ、僕は確認したいんだ
今日はどこかおかしいと
「なぁ、今日人身事故があったんだけど」
一息で聞くつもりだったのに、ひどく勇気のいる行為のように思えそんな自分がわからなかった
「それが?どうしたんだよ」
友人が不思議そうにこちらをみている
「今日人身事故があったんだけど…電車が来たんだ…遅れないでそのまま」
一言一言噛み締めるように口にする僕をみて
「あはははっ」
友人は笑った
僕の心臓はドクンと波打っていた
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