第13話 おかしいだろ、この世界!!

 放課後、エリザと別れたあと。

 ちょっと駅前から離れた電柱の陰で、私はスマホを耳に当てた。


「──赤猫、聞こえる?」

『……今マルチ中だから手短にしてくれます?』


 すごい機嫌悪いんだけどこの人。

 そういや昨日も何かのソシャゲやってたな。


「柴犬がやられたって聞いたんだけど、本当?」

『……らしいですよ』

「はぁ……」


 帰り道、黒い折り紙があったと思ったら……そういうことか。

 マジでさっさと辞めればよかったのに。


「で、それを倒せばいいんだよね?」

『……昨日のターゲットは倒せたらしいですよ。でも、1いたみたいです』

「鬼が1匹増えたからって……」

『下忍なら上出来でしょう』

「でも赤猫ちゃんも下忍見習いでしょ」


 まあサポートに徹してくれるならいいんだけどね。


「柴犬をやった吸血鬼の詳細は?」

『暴走族との噂。朝っぱらから仲間を連れて、市内で爆走していたらしいです』

「えー……」


 また野郎の相手か。こいつら作った真祖は男好きか?


『あと、体育倉庫ぶっ壊したのも奴らしいですね』

「え、そんなことあったの?」

『え、知らなかったんですか?』


 なんか周りがそんなこと言ってたな。今日は体育じゃなかったから聞いてなかったわ。


『ということで、白兎様と青鹿様に討伐命令です。21時に雷都高校集合らしいですよ』

「随分遅いね?」

『それが翁から、「これから正体は隠すように」とのお達しがあって。なるべく忍具も、と』

「今までそんなことなかったでしょ……あっ」


 なるほど。真祖が出たうえ吸血鬼も増えたから、忍者バレと身バレ防止のためか。

 3年前、富士樹海のアレが終わるまでもそうだったな……ってことは押し入れの奥底じゃん。絶対カビてるわ。


「お面どうすっかな……」

『適当に買ってくればいいんじゃないですかね?』

「そうすっかな……」

『あ、ボス出たので切りますね。では』


 え、そんな理由で切るの?

 仕事ほっぽり出して?

 最近の若者はどうなってんの?


「しかし、忍具か……」


 正直、使いたくない。

 真祖相手となりゃ絶対必要だろうけど……青鹿は絶対使わないだろうし、そもそも頼りになりそうもない。


「……道具の手入れはしっかりしとこう」


 マキビシ、煙玉、爆竹、クナイ、刀……そして、銀の手裏剣。

 これさえあれば、忍具なんて……。


◇◇◇


 夜の校舎って、なんか無性にワクワクするよね。

 昼間は憂鬱なのに。これが深夜テンションなのかな?


「……おい。白兎サマよぉ」


 声をかけてきた青鹿の格好は、いかにもなバイク乗り風。

 プロテクター付きの上下スーツに、真っ黒なフルフェイス。

 いかにもライダーじゃん。カッコいいよね。


「なんだそのお面と装束は。ふざけてんのか?」

「……忍装束はカビてたから。黒いジャージをドンキで」

「んな安物じゃ吸血鬼の攻撃防げないだろうが! 任務舐めてんのか!?」


 仕方ないじゃん……。

 帰ったら洗濯して干すから許して……。


「てかその仮面だよ、仮面!! まさか縁日で買ってきたのか!?」

「そうだけど?」


 なんか文句あっか。6年前のヤイバー『オズ』のお面だぞ。


「他にもあっただろ!! ドンキに行ったんならさぁ!!」

「身バレ防止には最適でしょ」

「え、先生がおかしいの?」


 そりゃ変身したら、普通は正体がわからなくなるし。

 あと縁日って、昔のヤイバーのグッズも売ってるからいいよね。それと田舎の玩具屋とか。


「で、戦力はウチらだけ?」

「あなたは戦力外。サポートに回って」

「……おいおいおい上忍サマ。随分な言い分でございますね?」

「で、忍具は着てきたの?」

「あんな高えモノ使えるわけないだろ。借金持ちだぞ先生はなぁ」


 だから戦力外なんだよ。死んだら元も子もないだろ。

 私は……いずれ使うことになるんだろうな……。


「ともかく、基本私がやるから。青鹿は取り巻きの確保を」

「へっ。どうだか」


 ダメだなこりゃ。コミュニケーションが苦手な私にも問題はあるんだろうけど。

 まあ行くしかない。場所はグラウンド中央だったか。


「……うっわ、本当に体育倉庫ぶっ壊れてる。青鹿って体育の時間持ってたっけ?」

「テメェが上忍じゃなきゃお説教してるとこだぞコラ」


 私も危機感の無さをお説教してやりたいよ……あ、見えてきた見えてきた。顔隠してるし、裏モードで行こっと。


「おーい、そこのチンピラども」

「あ? 何だテメェ、ら……?」


 たむろしている不良どもが、一斉にこっちにメンチを……あれ?

 なんで化け物を見るかのような目を向けて来てんの?


「マジで何だテメェら?」

「バイク乗りに……ヤイバーのお面かこれ?」

「何だコイツら。イカれてんのか?」

「おいクソガキども、先生を隣のボケと一緒にしないでくれるか?」


 なんで皆そんなにヤイバー嫌いなんだ!!

 おかしいだろ、この世界!!

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