忌子

えいる

その一

私はただ独り、迎えを待っている。来るはずもないと分かっていても…。


ここは”この世”でも”あの世”でもない、境界になる場所。

無数の魂が集まり、やがて、それは人や動物の形となる。

そう、ここは何かしらの原因で死んでしまった者達が辿り着く場所。

私はこの世で死期が迫っている者を誘う死神とでも言っておこう。

死は誰にでも訪れること、それはどんな死にかたであれ、逃れられない。

私は幾度もそれを見送ってきた、死を刈り取るのが役目なのである。

忌子(きこ)。

境界に訪れた者達は、そう呼んでいる。

私は13番目の”忌子”…生贄に選ばれた者は名前を奪われる。

だから、生前の名前は知らない。

封村(ふうむら)という村がある…人口わずか300人。深山に囲まれて閉ざされており、村の中心には**「御影神社(みかげじんじゃ)」**がある。そこの境界に私は封じられている。

村人たちは忌子の存在を**「神様」「死神」「呪い」**とそれぞれ違った意味で信じているみたい。

忌災(きさい)」と呼ばれる疫病が村を襲った際、生贄(人柱)を捧げることで鎮められるという伝承がこの村にはある。

そこで当時、16歳であった、私は選ばれてしまった。

私には想い人がいた、でも、彼とは結ばれなかった。

それだけが私の未練である。

村は現在も7年ごとに「鎮めの儀式」を行っている。

14番目の忌子が生贄に捧げられれば、私の役目は終える。


ただ、人柱として選ばれた忌子は浮かばれない…












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