03 お蔵入りのアイディア

 当作は、初期構想と異なる形で膨張していきました。

 その過程でお蔵入りとなった構想について、あれこれ語らせていただこうかと思います。


 まず、赤星道場主催の無差別級トーナメントについてですが、こちらは主要キャラと新キャラを闇鍋のようにぶちこんでごった煮にしてしまおうという目論見でありました。


 なおかつ、対戦表はくじびきで決めて、勝敗もサイコロか何かで決めてしまおうかしらんなどという素っ頓狂な考えも抱いておりました。必ずしもユーリが優勝する必要はなく、とにかく大会が盛りあがればいいという考えであったのです。


 当初の構想では、赤星弥生子が最大の強敵でありました。

 そしてもう一名、宇留間千花もこの時点で設定しておりました。

 この時点では細かい設定を詰めておらず、『ウルトラ・ウルマ』という異名と、お面をかぶって入場するというアイディアだけが決定していました。ファーストネームも、千花ではなく千々良でありました。

 おそらくは、大怪獣たる赤星弥生子の対比として生み落とされたキャラクターであるのでしょう。


 しかしそれは、『4th Bout』を書きかけていた時代、2013年のことです。

 けっきょく無差別級トーナメントを取りやめたので、宇留間は創作メモの中で眠り続けることになりました。

 そうして執筆を再開させたのち、『アクセル・ロード』の参加者として引っ張り出されることになったのです。

 宇留間の初登場は2022年7月ですので、9年ばかりも寝かされたのちに誕生の機会を得たわけでございます。

 それで宇留間には、ユーリの運命を変転させる大きな役目が与えられた次第です。


 次に、瓜子の最大のライバル・メイについてです。

 こちらのメイは、もともと野獣のようなキャラクターに設定されておりました。

 瓜子に負けた後、瓜子の強さに惚れ込んで、マンションに押しかけてくるというアイディアはそのまま活かされましたが、細部はずいぶん異なっております。


 メイは日常でも野獣そのままの乱暴さで、瓜子以外の人間には牙を剥くという物騒な設定でありました。

 どちらかといえば、ユーリとメイで瓜子を取り合うという、そんな構図であったのです。

 これは執筆を続ける中で、自然に改変されました。

 瓜子にだけ懐く野獣のようなメイというのも可愛らしいものでありますが、ユーリたちにとっては幸いな改変であったかと思われます。


 そして最後に、格闘技とロックの合同イベントです。

 当時はそういうイベントが実在しましたし、自分はロックバンドをこよなく愛する身でありましたため、初期構想から組み込まれることになりました。


 ですが当初は単発のエピソードで、ユーリたちが会場でガラの悪いバンドマンに絡まれるだとか、そのていどのアイディアしかありませんでした。

 そのアイディアは、『ベイビー・アピール』との出会いのエピソードで活用されております。


 その後、ユーリの音楽活動があそこまで大々的になったのは、完全に想定外でありました。

 ユーリのバンド活動やライブシーンを描くのが楽しいあまりに、ついつい筆が走ってしまったのです。

 これもまた、ストーリーを膨張させた大きな要因のひとつでありましょう。

 それがのちのち別作品にも影響を及ぼすことになるのですが、それはまた別のお話と相成ります。

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