第18話 カーラン伯爵家(閑話)
現在のカーラン伯爵であるタルミマクは非常に戸惑っていた。
「あ〜、その、ハロルド殿下?」
「何かな、カーラン伯爵?」
「そのお隣にいらっしゃいます
「ハッハッハッ、何だそんな事か! こちらのご令嬢は我が愛しの婚約者であるレミー嬢の取り巻きの一人でグローグス男爵家のナメリア嬢だよ」
「いえ、ですのでそのナメリア嬢が
レミーと婚約してやがてカーラン伯爵家を継ぐ事が決まっているハロルドだが、現時点ではまだサーヴァン王国の第二王子という立場なので、タルミマクも強くは言えない。
なので内心では『この下半身無節操野郎がっ! うちのレミーを愛しているのでは無いのかっ!!』と思っていてもこのような聞き方しか出来ないのである。
「ああ、何だそんな事か! それならばナメリア嬢は第二夫人となる事が決まったからだよ、カーラン伯爵。どうしてかと言うとだね、レミー嬢でしか
「あの、ハロルド殿下…… その事はレミーには?」
「ん? 勿論ちゃんと話してあるし、そもそもナメリア嬢を第二夫人にと言い出したのはレミー嬢だぞカーラン伯爵」
「そ、そうでございましたか。分かりました、それではどうぞごゆっくり……」
ハロルドとレミーの為にあつらえられた寝室から出たタルミマクはマークスにレミーの居場所を尋ねた。
「マークス、レミーは今は何処に居るんだ?」
「旦那様、レミーお嬢様でしたらビヨウ商会の春の新作を買いに出かけられました」
ちょうどこの日はビヨウ商会の初の試みとして、サーヴァン王国、ヨーネ王国、アメリア帝国の三カ国同時に新作販売を行う日であった。
「そ、そうか…… そんなお金は家にあったかなマークス?」
「いえ、当家にはもはや資産と呼べるものはございません。領地からの収入もカツカツにございます。今回はハロルド様によって王家へのツケでご購入されるとお伺いしております」
マークスの言葉を聞いてタルミマクは愕然としてしまう。
『えーっ!? 王家のツケって言っても絶対に請求が来るよね? これはレミーとハロルド様の結婚を急がねば!! 私にそのツケを支払えと陛下が言ってくるのが目に見えているっ!!』
内心でそう考えてから第二夫人の問題があった事を思い出すタルミマク。
『そうだっ!! グローグス男爵家からも幾らか支払わせれば良いんだっ!! 第二夫人という事はレミーやハロルド様と共にこの家に住むんだからそれぐらいの事はしてくれるだろう!』
そこで名案(とタルミマクは信じている)を思いついたタルミマクは自室へと戻りさっそくグローグス男爵への手紙を
そして翌朝、またレミーとハロルドの寝室へと向かうタルミマク。
もう朝食の時間もかなり過ぎているので大丈夫だろうと思い訪ねたのだが……
「ハッ、ハロルド殿下!? そ、そちらの女性は!?」
レミーでもなく、昨日のナメリア嬢でもない女性がハロルドの側に
「ん、何だカーラン伯爵? またその質問か。こちらはレミー嬢の取り巻きの一人でナグレム子爵家のケニー嬢だよ。レミー嬢、ナメリア嬢に続いて私のジュニアを勃っきさせてくれた真実の愛に目覚めさせてくれた三人目のご令嬢だ」
それを聞いてタルミマクは内心でワナワナと震えていた。『真実の愛に三人目って何だよ! ジュニアが勃っきしたら全員を妻として迎えるつもりか!!』心の中ではそう言うが口に出しては、
「そ、そうですか。それよりもうちのレミーは何処に行ったのでしょう?」
とレミーの行方を尋ねる。
「今朝までは寝室に居たのだが今日は帝国の友人が我が国に遊びに来るとかで出迎えに向かったぞ。ッ!? そうだケニー嬢! 私たちも早く支度をして出迎えの準備をしないと! レミー嬢に頼まれていたんだった!」
突然、思い出したのだろう。ベッドから全裸で飛び降りたハロルドは側にいた侍女に身支度を手伝わせていたのだが……
「おお!? 何という事だ! カーラン伯爵、この侍女は平民か?」
「いえ、そちらの侍女はタマカキ男爵家から行儀見習いとして来ているアイシャと申しますが?」
「そうか! だからか! 君、君も私の真実の愛の相手だ!! 今夜、この部屋に来るように!!」
隆々と勃っきしたジュニアを見ながらハロルドはアイシャにそう言ったのだった。言われたアイシャは顔を赤らめて「はい、殿下」などと返事をしている。
『もう、好きなようにしてくれ……』
それを見たタルミマクは心の中でそう思いながらレミーが迎えに行ったという帝国の友人が誰なのかと頭を悩ませるのだった。
「マークス、いったい帝国の友人とは誰だろうか?」
ハロルドに聞いても聞いてないと言っていたので優秀なマークスに聞いてみるタルミマク。
「旦那様、レミー様の帝国のご友人は皇帝陛下の弟君であらせられるハベル大公のご夫人でございましょう。何度か文を交わされていたと覚えております」
「なっ!? ど、何処でそんな
「そこは私にも分かりかねます」
相手があまりにも大物過ぎたので慌てたタルミマクは直ぐに出迎えの準備を指示しているハロルドの様子を確認しに行く。が、既にハロルドは使用人に指示を出してまた寝室に引っ込んでしまっていた。
「殿下はどのような指示を出していたのだ?」
使用人に確認をとるタルミマク。そして……
「その食器はダメだ! こちらで用意しておくように!!」
ハロルドの曖昧な指示で何とか準備しようとしていた使用人たちに新たに指示を出しながら、『はあ〜…… 私はもう二ヶ月後ぐらいに引退届を王家に出そう。絶対にそうして妻の元に身を寄せよう。領地も全てレミーとハロルド殿下に丸投げだ!!』そう決意していたのだった。
何とか他国の皇族が来ても大丈夫だろうという体裁を整え終えた時にレミーが友人と共に家に戻ってきた。
何故かレミーとナメリアに挟まれて玄関前にやって来たのは男性で、その後ろに薄幸そうな女性が一人いる。
レミーはタルミマクを見つけて男性を紹介してきた。
「お父様、こちらはマダギ様でございますわ。ハベル大公閣下ですのよ。後ろに居られるのが大公夫人のカーラ様ですわ。今回はお忍びで遊びに来られたんですの」
大公夫人が友人だと聞いていたのに、まさか大公その人まで来るとは思ってなかったタルミマクは動揺を隠しきれない。
「こ、こ、これは大公閣下、あばら屋にようこそお越し頂きました。た、大したおもてなしは出来ませんが、どうか我が家と思いお寛ぎ下さい」
何とか言葉を絞り出しレミーを睨むタルミマク。だが、レミーの目を見つめて数秒…… その目の光が鈍ってきた。
「お父様、大公様とご夫人の歓待は私とナメリア、それにハロルド様とケニーでやりますわ。なのでお父様は執務室でお仕事をなさって下さいませ」
「ああ、そうだな。そうしよう」
棒読みのように言葉を返したタルミマクは執務室へと向かっていった。
「さあ、マダギ様。こちらでございます」
「うむ、有難うレミー嬢。お邪魔するよ」
大公も棒読みのように言葉を返していた。レミーの目は後ろにいる大公夫人を見ている。
「カーラ様もどうぞ」
「有難う存じますレミー様……」
大公夫人の目も虚ろであった……
こうして、エレンの危惧していた通りにレミーはアーメリア帝国へと手を伸ばし始めていた。
その事を王家もクロスもまだ気がついていない……
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