その通知を見なかった
SNS、まあ今の時代、誰でも何かしらやってるよな?
これはそんな日常のツールにまつわる俺の話だ。
俺がまだ高校生だった頃、当時はあるSNSがとんでもなく流行っててな。
仮に「A」としておくけど、クラスの連絡、個人的な雑談、果ては告白にまで使われるレベル。
やってない奴はいないって言い切れるくらい、当たり前の連絡手段だった。
実際便利だったし、無我夢中でスマホに張りついてるやつも珍しくなかった。
俺はそこまで興味なかったけど、ハブられたくなかったから流されるままに使ってた。
――あれは、友達とカラオケに行って騒いでた日のこと。
時間も忘れて盛り上がってたんだが、実は大学生の先輩(うちの学校のOB)がこっそり酒を持ち込んでてな。
俺も皆につられてちょっとだけ飲んだ。まぁ若さゆえの過ちってことで、大目に見てくれ。
で、その帰り道。
日付が変わるくらいの時間帯だったか、スマホの通知音が鳴った。
何も考えずに取り出して、「A」を開いた。
……そこには死体の画像が投稿されていた。モザイクなんてない、生のグロ画像。
俺は顔を背けた。気持ち悪くてな。誰かの悪質なイタズラだと思った。
こんなことやるのは一体誰だ?、苛立ちから確かめようとして
嫌々画面をもう一度見るとその投稿――発信者が俺の名前だった。
は? って声が出た。
冷静になって、投稿者のプロフィールを確認した。
番号を見る。俺の番号だった。
俺が今持ってるスマホ、そのSIMカードの番号。
ありえない。理解が追いつかない。
混乱と吐き気に襲われて、道端で嘔吐した。
早く帰ろうと思ってスマホをしまおうとした瞬間
また、通知音が鳴った。
もう見たくない。そう思ってスマホをポケットにねじ込み、足早に帰宅した。
シャワーを浴び、気持ちを切り替えて部屋へ戻る。時計を見ると2時。
その時、また通知音が鳴った。
さすがに鬱陶しくなって、俺はスマホの電源を切った。
誰かの連絡だとしても、事情を話せば許してくれるだろう。
……そう考えて、そのまま眠った。
――そして俺は、その通知を見なかった。
俺が助かる唯一の可能性を、自分で手放した。
意味がわからない?
まあ最後まで聞いてくれ。面白いのは、ここからだ。
翌朝。
寝不足と二日酔いで苦しんだが、なんとか準備をして学校へ向かった。
当然、スマホも持ってな。
電車に乗った。座れなかったし、やることもない。
だから俺はスマホを取り出した。
昨日のことが少し引っかかった、それでもずっと電源を切ってるわけにもいかないだろ?
電源を入れ、「A」を開く。
――通知件数、1000件超え。
「電車に乗るな」「事故に遭う」
そんな件名ばかりだった。
昨日のグロ画像を思い出した。
あの床の模様、椅子の色、手すりの角度……
この電車と、そっくりだった。
手が震えた。
俺は最新の通知を、恐る恐るタップした。
「俺は助かろうとした。
これが届けば、きっと俺の死を変えられる。
そう信じて投稿した。
でも、もうダメだ。
俺は、いやお前は死ぬ。
事故に巻き込まれて、俺のように。
お前が、俺の警告を見てくれてさえいれば助けられた。
俺も、お前も。
……全部お前のせいだ。
お前のせいで、俺もお前も死ぬ。
もう逃げられない。」
読み終わった瞬間、電車が揺れた。
床が傾き、手すりが軋む。
車体が潰れていき、天井が――
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