#19 協力要請
「説明を続けますね」
「日本時間で今朝、八月九日午前六時ちょうどに国連にて共同声明が出されました。この国連総会は異例で初めてのリモート開催だそうです」
国連という言葉から「国家を超えた全地球的プロジェクト」という表現を再び思い出す。
「一つ。
挑戦と試練で迷っているあたり、これだけのことをしてきた存在に対して下に見ようとしている連中が居るんだ、という驚きを覚えたが、黙って
「一つ。全人類は協力してこの難局を乗り切るが、それぞれの地域に出現した
これか。これが「攻略」という姿勢を定めたのか。しかも「原則」なんて逃げ道のある言葉まで使って。
「一つ。情報共有は各国より国連に対して行い、国連から全世界に向けて発信すること」
国連へ非加盟の国はどうするんだろう。今後そこに
「一つ。
初めて明るい、というかまともな声明が出た、と感じた。
でも「要請」という言葉には弱さを感じる。従わないとこは従わないんだろうな、なんて昨今のニュースを見ていたらそう思わざるを得ない。
「一つ。これらの声明内容は、状況に応じて更新される。皆さん、ともに手を取り合いましょう。助け合いましょう」
聞いててモヤモヤはしたが、最初の
「以上となります。では次に現時点でわかっている情報の共有をしたいと思いますが……休憩を挟みますか?」
「いえ、続けてください」
と答えた直後、自分が今、全然疲れていないのはもしかして
「では続けます。
守る?
「守られないといけないこと、というのがあるのですか?」
「はい。一つは
殺害――人類揃って頑張りましょうって国連が音頭をとっているこんな状況で?
「インドでは、
貧しい人たちの要求、そしてテロリストとしての殺害。本当にテロリストだったのだろうか。
そんなの発表している側のさじ加減でどうとでも言えるんじゃないかというのが第一印象。
もしも俺が「攻略なんてやめて
非常事態を理由に国が国民の自由を奪う――ちょっと前の感染症でも同じことが起きたけど、歴史の授業で習った戦時中の日本の様子と重なって、とても息苦しい。
「もう一つは、アメリカで起きた悲しい事故がきっかけです。アメリカでの最初の
そういうことか。
今はまだ個人レベルの話だけど、場合によっちゃ
内部で生態系の観察をしていたときは全く恐怖を感じなかった
正確には、そういうものが出現しただけで簡単に殺し合いを考える人類に対してだけど。
「これらのことから、力を手に入れた
酷いな。
「また、これは決して他の人に話さないで欲しいのですが、
つまり、もしも逃げなければならないような事態になったら、
「ショックを受けられるのもわかります。ただ本当に、安全のための措置だということをご理解ください」
当事者となったことで発生した危険や不利益を、まだ頭の中で整理しきれずに反芻しているところへ、
「だから色んな意味で体を鍛えるのが大事ってこと」
ああ、そうだよね。自衛のためには強くなるしかないのか。さっき経験値って言ってた人たちも、そういう背景があって、必死に強くなろうとしてたのかも――いや、やっぱりダメだった。その考えは肯定できない。
地球人同士の醜い争いのために
「もし
また別のマッチョポーズ――場を和ませようとしてくれているのかもしれないが、自分より恐らく十歳くらいは年上っぽい砂峰さんのこの空気の読めなさにうんざりする。
それに最悪、
「考えさせてください」
心情的には拒否一択なのだが、国への反抗心と受け取られたくはないのでいったんは回答を保留した。
それに協力する姿勢を見せておいて、殺される前に逃げるって選択肢もあるかもだし。逃げきれるかどうかは別として。
ただやっぱり幼い頃からずっと感じていたこの現実の人間社会のクソさ加減に再び
### 簡易人物紹介 ###
・
主人公。
・
すらっとした長身で眼光鋭い眼鏡美人の三等陸曹。色々教えてくれる。
・
マッチョなお兄さん。陸上自衛隊のカレーに誇りを持っている。マッチョポージングなしには喋れないのかもしれない。
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