第2章:夢の境界



その夜、澪は不思議な夢を見た。


霧が立ち込める廃駅のホーム。遠くに鳴る列車の音。濃い紫の空の下、白いスカートが風に揺れている。


遥が、そこにいた。


「澪」


その声は風のように遠く、けれど胸の奥に響く。


「ここは、記憶と夢が交差する場所。私たちが、重なり合える最後の時間」


澪は、遥のそばへと歩いていく。けれど何度歩いても、距離は縮まらない。


空から、無数の手紙が降ってくる。

それは遥が送れなかった言葉たち。すべて澪への想いだった。


(どうして……)


「私はもう、いないよ。だけど、忘れないで。確かにここにいたことを」


遥の身体が光に溶けていく。


「さよならは、言わないよ」


言葉の残響だけが、霧の奥に響いていた。

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