くるみ割りラプソディ
千尋井 玖ゆ
其の一 『やにあり谷あり!』
お昼、男子学生達が購買所で我先にと人気パンの争奪戦を繰り広げている光景を横目に、
「智原先生、胡桃子の相談を……」
四月に入ってからというもの胡桃子は養護教諭である
胡桃子は大人であり
「圍先生、顔、顔が……」
知恵乃は自らの口元を押さえながらぷるぷると震え、胡桃子の顔を指差しました。
顔と言われても何がどうなっているか理解できていない胡桃子はとりあえず保健室内に置かれている手鏡を使わせてもらい自らの美しいと思われる顔を確認しました。
「あら、やだ!」
胡桃子は自らも驚きを隠せない衝撃的な存在に思わず大きな声を出してしまいました。それは老廃物や埃で大豆くらいの大きさに成長した目やにでした。
胡桃子は午前中の授業で生徒達に目やにを付けながら真面目に授業していた自分の姿のことを思い起こす。その途端に照れる、とにかく照れる……恥ずかしがる場面だと思いますが胡桃子は途中から可笑しくなって笑いが抑えれなくなり、しばらく一人で腹を抱えながら爆笑してしまいました。
「だから視界が悪かったのね。智原先生、取ってくださいませませ」
「え、私が目やにを……わ、分かりました」
本音で言えば知恵乃は胡桃子の大きな目やにを取るのが嫌でした。普通は誰だって他人の目やになんて取りたくないものです。まだ生徒たちの目やにならまだしも、大人の目やになんて。だけど知恵乃は優しく、断るのが苦手なタイプなため、他人であり大人でもある胡桃子の目やにを嫌々な顔をしながらも丁寧に痛くないようにピンセットで取り始めました……。
「目やに、取れましたよ圍先生」
大人であれば目やになど自らの手で取れるものをわざわざ知恵乃に取ってもらい、目やにを受け取ると嬉しそうにハンカチに包んで大切に仕舞う胡桃子。
椅子に座り向かい合う胡桃子と知恵乃は相談を始めるかと思えば、机に愛用のカップや紅茶パック、お湯を沸かしだすなどティータイムの準備に取り掛かりました。
お昼休みという時間を有意義に使う二人。
だけど、お昼休みはそうそう長くも無いのにティータイムの準備をのんびりと約十五分以上かける二人……無駄なやり取りとティータイムの準備に時間をかけて相談の時間がなくなるという繰り返しを毎日している二人。
そう、胡桃子だけじゃなく知恵乃もおバカなのでした。
よって、今回は朋が胡桃子の目やにを取るだけで終わったのでした。
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