【完結済み】ユニフォームを脱いだなら
宮川 佳
第1章
1−1
暗がりのなか、私は運転席にいた。
右手で慎重にスマートフォンを構える。
カメラごしに、左手で握る別のスマートフォンの画面がうつっている。淡く車内を照らす光の源は、助手席で半分眠っている男のものだ。
探していた情報はすぐに見つかった。
インスタグラムのフォロー先。丸いアイコンが並ぶなかに、目的の男はいた。
正方形の写真が並ぶ画面に切り替える。飴色のカウンターに乗ったカクテルの写真が、連日のように投稿されている。写真をタップする。店名とカクテルの名前が、ハッシュタグつきで並んでいる。たまに、自撮りで取った笑顔の写真と背後にうつる店員らしき別の男性が混じる。店名はどれも同じ店だった。
――見つけた。
私は右手を動かした。一瞬、フラッシュがまぶしく光った。
男のコートをめくり、用済みになった男のスマートフォンをジャケットの内ポケットに戻す。
雨が激しく車の天井を叩いている。絶え間なくフロントガラスを流れ落ちる雨は、まるでだれかの涙のようだ。
けれど、決して私の涙じゃない。
私はコートを脱ぎ、後部座席に放った。
運転席のドアを開け、外に出る。
たちまち全身が濡れていく。十二月の夜、冷たい雨に降られてるというのに、まったく寒さを感じなかった。
今夜が雨で良かった、と思った。水かさは増しているだろう。発見が遅れてくれれば、なおいい。
なによりも必要なのは時間だ。
場所の下見は事前に済んでいる。車を停める場所も、川までの距離も、そこに男を沈める作業も、必要な工程を何度も何度も繰り返しイメージしながら、実際に足を運んだ。
――あとは、実行するだけだ。
私は助手席のドアを開け、しゃがみこむと、男の脇のしたに腕をとおした。
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