第5話 初告白

 それから、僕はひたすら英語を予習し、三田先生の授業で発言しまくった。少しは先生の授業を盛り上げられたと思った。

 部活では、練習に励みなら横目で先生の華麗なラケットさばきに見とれていた。

「晃輝あんた、やばいよ。いくら先生が好きだからって手挙げすぎでしょ。」

碧がくちをとがらせてくる。

「だって斎藤先生も言ってたろ。積極的に手を挙げて先生に協力しろって。」

「ふ~ん。だったら数学の男の教生先生の時は、なんで沈黙してるのかな。あんた数学が得意でしょ。」

「そ、それは・・・・・」

碧は、氷の微笑を向けてくる。


 3週間が過ぎた。教育実習最終日となった。三田先生が授業の最後で挨拶をした。

「3週間、楽しかったです。授業に協力してくれてありがとうございます。」

僕を見ていったような気がしてドキドキして下を向いてしまった。

「この経験を生かして教師になろうと思います。また、あいましょう。」

みんなで拍手をした。

 級長が、先生へクラスで書いた寄せ書きを渡した。先生は少し涙ぐんでいたようだった。


 部活でテニスコートに行く途中の校舎脇の小路で三田先生と出くわした。

「伊集院くん?だっけ。テニス部?」

「そうです。僕、先生好きでした!・・・・授業が・・」

三田先生はキョトンとして、それから微笑み

「ありがとう。いっぱい手を挙げてくれて、嬉しかったよ!」

 あ~俺のヘタレ!!

 初告白は、不発に終わった。


 部活終わりにトボトボ歩いて帰る途中、三田先生が男の人と歩いているところを目撃した。スーツを着た男性だった。2人は手をつなぎ人混みに消えた。

 

 初告白は、完全な敗北が決定した。





 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る