第11話 蝶番
ぎい、ぎい、蝶番は調子が悪い。油を差しても、たてつけを直しても、ぎい、ぎい、文句ばかり言っている。よほど面白くないことがあったのだ。今日も家主は見知らぬ相手と玄関先で楽しくお喋りしていて、蝶番はドアをばたんと閉めてやりたいところだが、ドアの方はそれを許さない。いいじゃない、別に、人間がどう生きようと。関係ないもの。と、ドアが言って、ドアノブも鍵穴もそうだそうだと応じるけれど、蝶番は気に入らない。だってあいつ、影がないもの。入っていいよと家主は言わなくて、だからあいつは入れない。ドアを開けて寄りかかった家主と、玄関先で話すだけ話して帰っていく。でも、そのうちに入って来られるようになるかもしれないのだ。家に入れたら、きっと食害されるだろう。多分家主は分かっていて、まだ家には入れないが、滅多にない機会を喜んで、事情を聴取している。許してやりなよ、とドアノブが言う。あれは家主の趣味だから、と。家主は怪異が大好きだ。だから、家具や建具の一つずつに、見つけた怪異を封じてきた。一つずつを可愛がってくれるから、見慣れてきたけれど、蝶番はこれ以上被害者を増やしたくない。家主が食われるか、怪異が封じられるか。きっとまた後者だよと、ドアは面倒そうに呟いていた。
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