魔法使いとJK〜厚顔無恥で面倒な奴ら

2nd kanta

第1話 ヒマリ拉致られる

「ギャッハハハハ!! 雌なんてデカチンで捏ねてやれば速落ちよ!チョロ過ぎるだろう!」


 金髪のツーブロックでオールバックに丸型のサングラス、アニキ分の貴弘が自論を手下共に語る。


「さすがアニキよくご存知でー!」


 赤い短髪、鼻ピーのヤスが貴弘を気持ち良く持ち上げる。更に調子に乗った貴弘の口が止まらない。


「女だってヤリたくて仕方が無いんだよ!全てがビッチて事よ!」


 絶好調の貴弘は更に続ける。


「だからヤラレそうになっても、抵抗しないし、暴れもしない。

 

 旦那や彼氏の寝ている横で平気で事を始める。起こそうとしないし、大声も上げない。

 

 助けなんて求めていないからな!

旦那の上司や彼氏のダチからつまらぬ事で脅かされすぐに股を開く。

 

 ヤリたくてしょうがないのさ、被害者ぶるけどケーサツに行かない告訴もしない、誰にも相談しない。まだまだヤリ足りないからな!

 

 なんせ、雌なんて皆んなの肉便器だからなぁー!ギャハハハ!」


「おぉ、アニキの推論に感服しました。ヤリたく成った時に好きにやれば、良いんですよね!」

 

 感激のあまり、涙ぐむ太鼓持ちのヤスであった。


「アニキそれってエロ漫画のヒロイン設定そのものじゃないですかー?

どんだけ読んでるっすかエロ漫画!」


 ヤレヤレと上から目線の金髪ロン毛で麻呂眉毛のヒロが溜息をつく。


 たまり場としている地下の営業準備中のライブハウスに、半グレ三人と不良の高校生が下品に笑い声を上げていた。


 たまにライブハウスの手伝いをしながら、怪し気な売買したり女の子をナンパして金を持っているオヤジ共に斡旋したりもしている。


「ところで、徹よ」


 アニキ風の男、貴広が高校生の安部徹にあの事について確認を取る。


「水島ヒマリってお前が速攻で振られた女だよな。そいつを拉致ればいいんだな五十万出すんだろう」


徹は黙って頷いた。


「学校の同級生を拉致ってヤルなんて金持ちのボンボンはやる事が違うなぁ」


 貴弘はニヤつきながらタバコの煙を吐いた。


「僕の誘いを断るなんて身の程知らずの女!僕のデカチンで分からせ調教してやるんだ!!」


「おいおい、イキリ過ぎてヘマこくなよ!俺らもブタ箱に入れられるからな!」


「分かってますよ。その為に親父を騙くらかして五十万出させたんですから」


 貴弘は銜えていたタバコを灰皿に押し消して席を立った。


「行くぞ!料金分は働かないとな、徹!女の行動は分かってんだな!」


 バッチリですぜっと徹は自信あり気に親指を立てた。4人は黒いワンボックスカーに乗り込んだのだ。


☆☆☆


 水島ヒマリは地元の進学校に通う高校2年生、学校でも街でも噂の美少女だ。

そんな彼女は、よく告白やらナンパ等をうんざりする程受ける。

 

 勿論彼女は速攻で断るし目も合わせない。常に防犯ブザーを5個持ち歩いてありとあらゆる手段を使い難を逃れてる。

 

 中学生の頃から頻繁に告白されるが一度も誰とも付き合わなかった。いつも、ごめんなさいと頭は下げてたが「何で私が毎回毎回謝るのよ!」と言わざるおえない空気に苛立ちを憶えていた。

 

 下心満載の薄ら笑いの気持ち悪い顔、どこぞのエースとか、どこぞの部活の長とか、どこぞの家の坊ちゃんとか、兎に角鬱陶しい。


「私は誰とも付き合わないんだから!

あー!思い出しただけでムカつく!

だって私にはパパが要るんだから!」


 両手で頬を挟み身体をくねらせぐっへへと笑う。少し危ない子心配だ。


 パパはパパでパパ活では無い。ヒマリの実父でヒマリは完全なるファザコンである。この歳になるまで拗らせまくっていたのだ。



「ヒマリは大きく成ったらパパのお嫁さんになるの絶対だからね!」


「おおー!そうかヒマリ早く大きくなるんだぞ!パパは待ってるからな!約束だぞ!」


「あなた、何馬鹿な事言っているのですか?小学校4、5年生で拒絶されるんだから、今から覚悟を決めた方が良くてよ」


「そんなーぁ」


がっくりと肩を落とすお父さん。


 ヒマリの黒髪は背中の中程で揃えられている。勿論ケアもバッチリでサラサラだ、身長は165センチ、スタイルも素晴らしい、所謂出る所は出て引っ込む所は引っ込む、Dカップらしい。街で噂の美少女!も頷ける。


 何故か生粋の日本人なのに北欧のハーフかクォーターかの雰囲気があって美少女のベクトルが他の人達の斜め上に行っていた。


 登校時のスタイルは紺のブレザーの制服にチェックのスカート黒のソックス黒のローファ襟元に赤いリボンを身に纏まさに絵に描いた優等生、スタイルも抜群、限りなく需要がありそうな子だ。


 しかしながら日々の男達からの鬱陶しさから表情が抜けて来てる。近頃では冷徹クールビューティーと噂されているが本人は然程気にしていない。と言うか気付いてもいない。

 

 私には両親と小6の妹がいる。一家は近郊の2階建て1軒家で暮らしていて場所は少し田舎っぽいけど私は気に入っている。


 父親は商事会社で部長、私の結婚相手は自分より弱い奴は認めないと豪語しているけどパパは強いのかな?


 母親は専業主婦、妹の美海みうの小学校でPTAの役員をやっている。やっと今年で最後だと安堵していて、何故か最近お腹周りを気にし過ぎる気がするけど、ダイエットは無理でしょう食べ過ぎだよ。


 美海は近頃生意気に成ったけど私にとって可愛くて仕方が無いこの事は美海には言わないけどね。


 美海もパパが大好きだけどね。パパは絶対私の物、美海には絶対渡さないから!



☆☆☆


 

 少し前に、水島ヒマリは隣のクラスの安部徹から告白されたが瞬殺で断った。

彼に対して良い話は聞かないし、悪い人達と付き合いもあるって噂話も聞くそれ以前にヒマリの趣味ではなかった。


 私を見る目が歪んでいて、観られる度鳥肌が立つ気持ち悪さがあった。最近は監視されてる様な付けられているような嫌な感じがずっとしていたのだ。


「誰かに相談したほうが良いよね」


 学校の帰り道、クラスメイトの亜希子と別れ公園の脇道を通る。家迄は後四、五分位の距離の処で黒いワンボックスカーが止まっていた。周りの家は奥ばっていて人影も見つからない。


「何かヤバイね、此れは不味い、わたしピーンチ!ヤバイヤバイあぁぁ心臓ドキドキしてきたわ」


「走って逃げるゾ!!」


 あのワンボックスカーさえ抜ければと、精一杯の全速力で走る。良し!抜けれるぞ!


 その時車の影から練らりと二人のヤンキーが現れた。


「やぁ!ヒマリちゃんどこに行くのかな俺らとお出掛けしょうぜ!」


「名前迄知られている!マズイ!」


 後退りし後ろに振り向きざまにダッシュ!


「ヒマリちゃん悪いな此処は通れないよ」


 また男二人が現れた。一人は見覚えがある少し前に振ってやった安部徹だった。


「安倍君此れ犯罪だよ!人生を棒に振るよ!」


 ヒマリは安部徹を睨みつけた。


「何を言いてるのかな僕たちは友達じゃないか?」


 安部徹は、二ヤ付きながらヒマリを絡みつくじっとりとした眼で舐め回すように観ていた。


「それに訴える人がいなければ事案にはならない優等生の君なら分るでしょう。例えば動画を撮られたりしたらあっという間に世間に広がちゃうし困るのは君でしょう?」


 直近の未来の自分に待ち受けるものにヒマリの体は震え出した。怖くて、怖くて身体がいう事を効かない。立っている事も精一杯で恐怖で目の前が歪んで見える。家に帰りたい……


「さぁ行こうぜヒマリちゃん」


「嫌だ!」


 ヒマリは防犯ブザーに手を掛けたが、背後から手を掴まれてしまった。


「ヒマリちゃんそんなモン鳴らされたら近所迷惑でしょうが」


「いやーー!!離してよーー!!」


「車に乗せろ!」


 貴弘の一言でヒマリは押さえつけられ抱えられ黒い車に引きづられて行く。


「イヤ!離して!誰か助けムッグッッ」


 パパ助けて……


 ヒマリは口を押えられ3人にワンボックスカー押し込められ、バタンと乱暴にドアが閉められ車は、タイヤを鳴らしながら急発進した。

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