第16話 止まり木の家
アカデミーに在学している家令達が宿舎としているのは、街から少し外れた場所にある邸宅。
不思議な建築になっていて、部屋の全てから緩やかな勾配のある庭に出れるようになっていた。
明るく、日差しと風通しのいい建物で、居心地が良い。
「元は、
冷凍庫いっぱいにアイスクリームが入っていて、彼女は、在宅時は一日中食べている。
「それは、ええと・・・?」
王族の名前は大概頭に入ってるつもりだが、聞き覚えは無かった。
「昔の話だからな。ええと、現在の
「・・・前皇帝陛下の
「そうそう。で、その
「で、
へえ、と
王族でアカデミー長とは、それは抜群に秀才で人格も優れていたという事だろう。
「そうね。しかも第一子なわけよね。その前の皇帝は艶福家で、つまり兄弟姉妹はやたら多かったらしいの」
それでも、その立場を捨てて宮廷から離れたというのか。
「だからと言ってその息子である
「・・・はあ?弟帝の、お妃がですか?」
これこれ、と
「ここカエルマークってお菓子屋。ここんち、継室候補群の家なんだよな」
このザラメ入ってるカステラ美味しい、と
「・・・確か、
「うん。あそこんちなかなか来ないんだ。しかも、当主の腰が落ち着かなくて国内外あちこちで暮らしてるもんだから、呼び出し封書も届いてるんだか居ないんだか・・・」
継室候補群一の問題児だ。
しかしそれは、問題は起こさないが、問題にならない家、と言う意味で。
総家令もいつもあそこはどうなってんだとこぼしていた。
「で、その
「・・・・学校辞めないまま嫁に来ちゃったってことよねえ・・・。兼業継室。・・・聞いたことないわ」
「まあとにかく。もともとその方のご実家の持ち物だったのがこの物件。
アカデミーに在籍しているという事は、学生か研究者、講師でもあるという事。
それなりに激務ではある。
「今、アカデミーに出入りしているのは、あとは
「あと、
「指導員が鬼の
家令は戦場にも行くのに常に医師が足りないと、
きっと次は
五年でそれを全て履修しなければならない。
こちらは、卒業は一体いつになるやらである。
アカデミーでの生活を半年、休みが夏と冬の2ヶ月づつ。
その2ヶ月で、宮廷と
何の為かと言うと、勿論、自分もまたいずれ入学するのだから見学というのは一つ。
それから、この生活能力のあまりにもない家令二人の面倒を見ろという事だろうと思う。
「・・・・私、鍋って食べるの初めて!」
「え、本当ですか?・・・と言ってもこれはすき焼きですけど」
「すごいなあ。
二人は感心して弟弟子を大絶賛した。
「・・・うち、母子家庭ですからね。母の実家は祖母が居ますけど、簡単なものなら子供の時から作ってましたよ。母の見様見真似ですけど」
「え?お母さんもお城勤めでしょ?副女官長様、何でこんな事できんの?」
「
「あれじゃないか。栄養士。大学とかにも栄養学科ってあるもんな」
真剣に話す二人が可笑しくて、
「違う、違いますよ。学校行かなくても大抵、皆、出来るんですよ」
家令の兄妹が本気で驚いているのがおかしい。
それから、すき焼きがとても美味しいと大絶賛。
「すごい!うまい!」
「・・・これ、何でこんなうまいの?肉と野菜なだけなのに?このスープがうまいからか・・・?」
大抵の食べ物は肉か野菜、もしくは魚だろう。
「良かった。・・・明日は、何食べたいですか?」
「明日もこんなうまいものが食べれるの?好きなもの作ってくれるの?」
「普段、城じゃ、
と言っても、二人は一般の家庭料理と言うものをあまり知らないらしい。
後で家庭料理の料理本を買って見てみる、と
「じゃ、本を買って、材料も買いに行こう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます