第15話 ドワーフ村のお祭り 生きてるって感じがするわ

村の門をくぐると、ドワーフたちが歓声を上げて迎え入れた。口々に「帰ってきたぞ!」「討伐成功だ!」と声が飛び交い、広場にはたちまち人だかりができた。


 エリーゼは軽やかな足取りで前に出て、精霊の力で収納していたサーペントを取り出す。ドスッ鈍い音が周辺に響き渡る。巨大な牙と光沢のある鱗が陽光に照らされ、どよめきが起きた。


「……こいつが、採掘場の主か」

「すげぇな……大きいな、まるで岩の化け物だ!」


 ドワーフたちは恐る恐る近づき、サーペントをまじまじと見つめた。村長が前に出ると、深々と頭を下げた。


「本当に、感謝の言葉もない……。おかげで村は救われた」


 それを聞いて、エリーゼがにこっと笑う。


「わたしたちは旅の途中、ちょっと助けになれたのなら、それで充分よ。それに防具とか貰ったりして、こちらの方が感謝しますわ」


「ボクたち、英雄と呼ばれるより美味しいものを振る舞われた方が嬉しいかな」


 アリスターが冗談めかして言うと、村長が陽気に笑いながらうなずいた。


「それなら、今夜は宴じゃ! 最高の酒と料理を用意しよう! そして、村の自慢の温泉も……今夜は無料開放だ!」


 その言葉に、村全体が沸き立った。酒樽が運ばれ、焚き火が焚かれ、野外には即席のテーブルが設けられ、肉や野菜が焼かれていく。


 日が暮れる頃には、村はまるで祭りのような賑わいを見せていた。音楽が奏でられ、子どもたちが走り回り、大人たちは杯を交わしていた。


「こういうの、悪くないわね」


 エリーゼが満足そうに串焼きをかじり、アリスターは傍らで葡萄酒を嗜みながら頷いた。


「まったくだね。……ふふ、ボクの美貌にふさわしい湯加減だといいけど」


 そう言って、三人は村の奥にある温泉へと向かった。


 夜空に星が瞬く中、温泉は静かに湯気を立てていた。岩をくり抜いて作られた露天風呂には、金属の成分が混ざっているのか、湯はほのかに琥珀色に染まっている。


 エリーゼは別の湯殿に入り、髪を結い上げながら静かに湯に浸かっていた。


「……ふぅ。生きてるって感じがするわ」


 右腕の金龍の紋様が、湯気の中で微かに輝いた。


 一方、男湯ではアリスターが湯面を見つめながら髪を整え、ダリルが端の方で静かに湯に浸かっていた。


「……拙者、この湯に心まで洗われるような気分です」


「わかるよ。たまには、こうして心を緩めることも大事さ」


 アリスターは目を細め、夜空を仰ぐ。ダリルもまた、湯けむりの中でそっと瞳を閉じた。


 宴は夜遅くまで続いた。村の若者たちは三人の冒険談に目を輝かせ、子どもたちはサーペントの鱗に触れては歓声を上げた。


 その夜、村はひとつの物語を得た。かつて恐れられていた坑道に潜む怪物が倒されたこと。そして、遠くから来た三人の旅人が、それを成し遂げたということ。


 それは、この小さいけれど長い歴史を持つドワーフの村にとって、忘れがたい記憶の一つとなった——。

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