第18作 【三題噺 #117】「庭」「失踪」「腕」

 この物語のおじさん主人公の呂律ろれつが、就労支援を担当するアドバイザー部久べくと面談している。


呂律ろれつさん、この建築会社はどうだい? 解体が専門の業者さんだよ」

「はい、ダメもとでも受けてみます」



 * * *



『弊社の採用面接にお越しいただき、ありがとうございました。

 慎重に選考を進めさせていただいた結果、今回は貴殿を採用させていただくことになりました。

 当社での貴殿の益々のご活躍をお祈り申し上げます。』


 呂律ろれつ部久べくに報告した。

「ああ……やっぱり」

「呂律さんめげずにこれからも……って、こりゃ採用通知だよ!」



 * * *



 呂律は、入社初日から空き家の解体現場に連れ出されていた。

 社長が呂律に言った。


「よ~し、今日はこの家の解体だ。家主は失踪したまんまで、心霊現象も起きるらしいが気にするな!」

「え? まさか、失踪した家主の腕が庭から掘り出されるなんてことはないですよね?」


「がっはっは、創造力豊かだな。……なんとか」


 社長は腕まくりをしてバックホーに乗り込んだ。


 呂律は重機の操縦ができないため、手作業で廃材と有価物の選別を行っていた。

「これって、どこに運ぶんですか?」


「大きな声じゃ言えねえがな、俺は山を持ってるんだ。廃材はそこに穴掘って埋めるんだよ。処分費用が掛からねえが、客からは処分費をふんだくってぼろ儲けよ!」



 * * *



 その夜、社長が廃棄物処理法違反で逮捕された。再び呂律は失業した。


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