第12作 【三題噺 #111】「透明」「参考」「味」

 第11作 【三題噺 #110】「気」「幕」「電撃」からの続きです。


前回までのあらすじ

 遊園地でのカニの着ぐるみを着るバイトに就いた呂律ろれつは、同じカニの着ぐるみバイト仲間のギャル木百合きゆりに会った。木百合となぞかけをしてコミュニケーションをとった。




 呂律ろれつとギャル木百合きゆりは休憩時間中なぞかけを続けた。


「さて、そろそろ『光の蟹光線』の始まる時間でござるな。呂律殿、着ぐるみを着るでござるよ」

「ところで、『光の蟹光線』は何を参考にしているんですか?」


「それは千葉県にあるネズミの国のエレクトリカルパレードでござるよ」

「やっぱり、そうですか。あれ、木百合さん、着ぐるみに透明なちっちゃいカニがいっぱい連なってくっついてますよ」


「それは、子ガニでござる。拙者の着ぐるみにくっついてくるでござる。ちなみに、中にLEDが入っていて、光るでござるよ」




『光の蟹光線』は、これまでのこのカオスな遊園地と思えないほど、まともなものだった。見事なイルミネーションに二匹のカニの着ぐるみが調和していた。


 夜とはいえ、着ぐるみを着ていると熱中症の危険もあるので、パレード中も適度に休憩が必要だった。

 休憩時間となり、呂律とギャル木百合きゆりは、着ぐるみを脱いだ。木百合きゆりのアニマル柄のTシャツは汗ばみ、茶色でロングの巻き髪も少し乱れていた。


呂律ろれつ殿、初めてとは思えない、良い動きでござる」

「ありがとうございます」


「時に、呂律殿、年の差のカップルはどう思うでござるか?」

「え、お互いにそれでいいなら、イイのではないでしょうか」


「なるほど。呂律殿はみそ汁の味は気にする方でござるか?」

「みそ汁ですか? 確かにお袋の味のイメージですが、うちは味噌もダシも市販品だったので、特にみそ汁の味ってのは気にならないですね」


「そうでござるか。呂律殿……実は、拙者の好きなタイプの殿方は……」

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