23話「木曜日(1)」

カチ、カチ、カチ

片手に持っているピンセットを動かし、鋏で切り込みをいれたところをまさぐる。

ピンセットに当たったものをトレイの上へと引きずり出した。

黒くて細長いものが、アルコールで綺麗に拭かれた後のトレイの上に存在している。

(…………寄生虫か、卵巣かな。もしくは腐った内臓…………は、まぁないか。)

(せっかくだし、数個分に切って色々やってみよう。)

「…………。」

「ん、何。」

理科室の中。

作業をしているボクに、故が話しかけてきた。

「今日さ、あの〜……色々あったじゃん。」

「うん。」

昨日も今日も、色々と起こりすぎた気がする。

昨日は学園の壁が爆破され、今日は学園内の電子機器がもんのすごい音を立てて壊れてしまった。


「原因の原因を知ってる?」

「ん〜……原因は知ってるけどそれは知らない!」

「やっぱり。そう言うと思った。」

「…………え、きも。なにそれ。」

故は興味本意でトレイの中のものを覗いたらしく、正直な感想を口に出した。

「虫が外で死んでたから、中がどうなってるのかな、って。」

「その黒いの何……?」

「卵巣か寄生虫だと思ってるけど……。」

「うぇぇ……。」

「手袋嵌めてるし、大丈夫な筈。」

「やだぁ…………内臓触ってた方がマシ。」


「…………え、そんなに??????」






途中まではよかったが、嫌そうに見続けていた故が泣きだしてしまったのでトレイの上のものは片付けをした。

……虫の死骸とよくわからない黒いものは燃やして消した。


「はい。手、洗ったから。」

「うぅぅ……やぁ…………。」

「…………ごめん。次からは魚の内臓にするから。」

「それもやぁぁ……。」

「え〜〜……。」

それは、ボクに一体どうしろって言うんだ。

(故は駄々っ子なのかな……。まぁ、そこも可愛いけど……。)

今、故をこの手で抱きしめればそのまま拒絶されそうなので肩に頭を乗せるだけに留めておいた。




「んぇ゙……もう大丈夫…………。」

「お兄様…………おてていい……?」

やっと泣き止んだらしい。

念の為、一度立ち上がり、もう一度手を洗ってから故の手の平の上に自分の手を置いた。

「んへへ……。」

そう言いながら、ボクの手をにぎにぎとしてきた。

泣き終えたというのに、故の目からは涙が未だに溢れている。

「ん……ふふ…………。」

「お兄様…………んへ……。」

故は何を思ったのか、その場でボクを押し倒した。

「あのね、私…………さっきの見て、私の死体の事を思い出したの。」

いつの間にか出していた球体関節の腕が、ボクの腕を掴んで床に抑えつける。

「お兄様、私……お兄様の事が好き………………。」

「あのときみたいに…………気持ち良くなりたい…………。」

「だから…………………………」

彼女の唇がボクの方に近づいてくる……

腕を抑えつける力が強いせいで、藻掻いても藻掻いても何もならない。

ただ、身体が激しく上下に動いているだけだ。

「あ___」




全てを察して瞼を閉じれば、目の前が暗くなる。

(これ……きもちいい…………あたま、とける……。)

(ゆえ…………ぅ……ボクも、きもちよくなりたい…………。)




「はー……………ふふ、ダーリン…………♡」

「ん……。」

「ねぇ、ダーリン。」

ボクの服が、脱がされていく感覚がする。

「このまま________________」

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