これって転生? 奏の不思議な仕置草紙
と〜まなさん
序章 全ての始まり
第1話 始まり(プロローグ)
俺様は、この界隈を縄張りとしているアレキサンダー大王である。
といっても家猫だ。
にゃおん(オホン)
母親の乳を求めて、にゃぁにゃぁと
その時、ソイツの家族に、このもったいぶった立派な名前をつけられた。子猫の割に尊大だったらしいが、なぜその名なのかは知らん。
今ではこの界隈で俺様に敵うモノはいない。飼い主に先見の明が? まあいい。
ところが、
アレクならともかくアレちゃんってどうよ、ったく。うにゃ、まぁ、呼ばれたら答えないこともない。
がしかし、受け答えは人間様にだけだ。同族及び鳥にも犬にも舐められるわけにはいかんのだ。沽券にかかわるからな。
アとでも言おうものなら最後、締め上げるっ!
ふふふん。俺様は強いのだ。〈名は体を表す〉というらしい。
にゃおんにゃおん(自画自賛はこのくらいにして)
今はまあまあ夜更けだが、俺様が歩いているのは外。
うむ、まあ見回りが目的だが、殆どお散歩だな。いやー滅多に犬にも猫にも会わないから、睨みを利かせる意味があるのか?……まあいい
じゃあ、涼しいから? ノンノン、熱帯夜とかいうらしいが、毛の長い種族の俺様にとって、外は夜になってもあっつい。
それでも、外に出たいのだ。だってさ、呼ばれているんだよ。
何に?って、何かにだよ。猫には見えんだよ。何が?って、そりゃ、アレだよアレ。野生の証明なんてもんじゃないぞ。大抵の猫は見えんだよ。
なんだよ、呼ばれて悪いか? そもそも出入り自由なんだから、いつ外に出ようが俺様の勝手じゃねーか。フン
まあ、飼い主が起きている時間内に帰宅すれば、家に入れてもらえるからもあるな。家に入ってしまえば夏ならスースー冬ならぬくぬくだし。
とはいえ、家猫ってのは、やるせないものだ……ドアノブに手は届くがさすがに開錠は無理だからな。
掌認証やら顔認証やらならいけるかもだけど……猫用? ふん、だいぶ未来の話だな。せめて猫用の扉付けて欲しいというのが、最大の希望だ。
さ、ともかく急ぎ用事を済ませ帰宅しよう。
夜になってやっと少し歩きやすくなったアスファルトをひたひたと進む。昼間歩くと肉球を火傷しそうに暑いが、今なら大丈夫。
ただ、なるべく建物や塀に沿っていかないと、近頃は都会でも、日中の隼しかり夜目の効く猛禽類しかり、空からの危ない攻撃があるからな。
うむ、間もなく目的地だ。
用事といっても大層なことではない。俺様にとって大事な用だが、二四六号とか人間が呼んでいる道路沿いで、知り合いに会うだけのことだ。
車通りの多い道はあまり好きじゃないけど、渡るつもりはないし、ソイツの献納品は甚(いた)くウマ~いのだ。じゅるるっ
ゆえに日参している。うっ、いやまあ、たまにだ、たまに……
「猫ちゃあん、私よ~。こっちおいで~」
そこそこ若い女が、エアコンの冷気をまとってビルのガラス戸を開けた。少しの間だけその冷気で涼むべく、しゃがんだ女の足元に寄った。
短めのパンツスタイルだが、俺様の毛がついたってかまやしない。涼しい美味しいが優先だ!
「にゃぁん(来たよ~ん)」
しまった。つい可愛い声が出ちゃったぜ。にゃおんにゃおん、待たせたな、女。一応ゆっくり座って首を傾げてみたりして。
だけど、そわそわしちゃうぜ。ふがふが
続く
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