第11話 大学生活の始まりと現実の新たな関係

国立大学の門をくぐった四月。真新しいキャンパスは、期待と希望に満ちていた。しかし、私、佐倉葵の心には、そのきらめきと共に、漠然とした不安も広がっていた。高校とはまるで違う自由な雰囲気は、時に私を戸惑わせた。新しい友人たちはできるだろうか。専門分野の授業についていけるだろうか。私にとって、それは新たな挑戦の始まりでもあった。


新しい生活の中で、私はいくつかのサークルを見学したけれど、結局、高校の陸上部のような熱中できる場所は見つからなかった。代わりに、私は学業に力を注ぐことにした。情報工学の講義は、想像以上に難解で、時には予習の段階で頭を抱えることも少なくない。それでも、新しい知識を吸収していく喜びは、確かにここにあった。


そんな新しい日常の中で、悠斗くんとの現実での交際も、本格的に始まった。高校時代は受験を理由にキス止まりだった関係が、大学に入ってようやく、少しずつ進展を見せ始めたのだ。


学食でランチを共にするのは、もはや日常風景だった。悠斗くんが選ぶがっつり系の丼ぶりと、私が選ぶヘルシーな定食。互いに一口ずつ味見をさせ合ったり、講義の内容についてあれこれ話したりする時間が、何よりも心地よかった。講義の合間の短い時間でも、廊下ですれ違えば自然と目が合い、微笑み合う。図書館で共同で課題に取り組むことも増えた。静かな空間で、隣に悠斗くんがいるというだけで、集中力が増すような気がした。


大学周辺のカフェで過ごす時間も増えた。試験前でなくても、参考書を広げ、温かいコーヒーを飲みながら、他愛もない会話を交わす。ときには、私が授業で理解できなかった部分を悠斗くんが分かりやすく教えてくれることもあった。彼の真剣な横顔に、私は見惚れた。


スキンシップも、少しずつ増えていった。最初は遠慮がちに、指先が触れ合う程度だったのが、今では自然と手をつなぎ、肩を並べて歩くことができるようになった。人通りの少ない場所では、悠斗くんが私の腕にそっと体を預けてくることもあった。彼のがっしりとした手の温もりや、隣にいることでの安心感。その柔らかな重みが腕に伝わるたび、私の心臓は高鳴り、胸の奥がじんわりと温かくなった。大学での学業や、新しい人間関係で戸惑う私にとって、悠斗くんの存在は、精神的な大きな支えとなっていた。彼といると、どんな困難も乗り越えられるような気がした。


しかし、キス以上の肉体関係には、いまだ至っていなかった。安全ではあるものの、夢と現実の乖離や、どこか物足りなさも感じていた。あのクリスマスの夜のキス以降、現実の私たちは唇を重ねることすらしていない。夢の中では、あれほど深く、濃密な関係を築いているのに。肌を許し合い、互いの体の隅々まで知り尽くしているような感覚。だが、現実の悠斗くんは、まだ私の唇を受け入れてくれただけなのだ。このギャップに、私は日々葛藤を抱えていた。早く、夢の中の彼に、現実でも触れたい。そう願う気持ちが、抑えきれないほど強くなっていた。


夜になると、私の夢は、現実の物足りなさを埋めるかのように、あの合格発表の夜に身体を重ねてから、さらに深く、溶け合うような親密さへと進んでいった。


夢の中の悠斗くんと私は、物理的な限界がないことから、何度となく繰り返され、肉体的結びつきは「いつ子供ができてもおかしくない関係」にまで深化していく様子を暗示的に描いていく。より深い一体感や官能を求めあう深化、言葉を超えたコミュニケーション、互いの身体の探求、絶頂と虚脱、そして再び相手を求めるサイクルの繰り返しとして表現されていった。


夢の中での悠斗くんとの身体の触れ合いは、私にこれまで知らなかった感覚の深みを与えた。彼の唇が、硬く盛り上がった乳首を優しく含んだ時、私の体は大きく跳ね、喉から甘い呻きが漏れた。吸い上げられるような刺激が、体の奥底から波のような快感を呼び起こす。その度に、乳房の揺れ、心臓の脈動、肌の熱、汗の感触、吐息の混じり合いなど、身体に生じる物理的な変化に伴う感覚を詳細に感じ取ることができた。行為そのものだけでなく、それに伴う内面の葛藤、彼への秘めたる願望、感情の機微、高揚、一体感といった精神的な深まりを重視して描写される夢は、現実での私の心をさらに複雑にした。


彼の掌が臀部の豊かな丸みを包み込むと、そこは吸い付くような柔らかさと確かな弾力で彼の手応えを返した。悠斗くんの腰がゆっくりと、しかし確実に奥深くへと動き始めるたび、私の内側は甘く、粘り気のある潤いで満たされ、吸い付くように彼のものを包み込んだ。その摩擦と密着感が、私の思考を奪い去り、ただ快感に溺れさせていくようだった。


性行為で絶頂に達した後の「一体感」と、それに続く漠然とした「寂しさ」の感覚を、夢の中で私は繰り返し経験した。その寂しさを打ち消すように、私は再び彼を求めた。この反復が単調にならないよう、愛撫やキスのバリエーションは尽きることがなく、回数を重ねるごとに肉体的・精神的な結びつきがより深く、密接になっていく過程が描かれた。


朝、目覚めると、枕は汗でじっとりと湿っていた。肌にはじんわりと汗が滲み出し、ショーツの股間には、甘い蜜が溢れ出したかのように濡れた痕跡が確かに残っていた。そして、心臓は激しく脈打ち、動悸がしばらく収まらない。夢の中の記憶は、私の中で葉山悠斗という存在を、もはや現実の友人という枠には収まりきらない、かけがえのないものへと変えていた。夢のリアリティと現実の乖離に戸惑いながらも、夢の中での彼の優しさ、彼の情熱、そして彼との間に生まれた深い絆は、現実の私を支え、未来への期待を膨らませる、秘密の原動力となっていた。

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