俺のポンコツスキルが美少女を神レベルに強化して無双する話~限界社畜は異世界でハーレムスローライフを満喫したい。たとえ「命令」スキルがポンコツチートだとしても~

ライキリト⚡

第一章 社畜はチートスキルで村を救う。

第01話 社畜はポンコツ女神と出会いチートスキルを授かる


「はあ……やってられねぇ……」


 都内の雑居ビル屋上。

 ビル風が髪を乱すのも気にせず、俺はカップ焼きそばをすすりながら一人ごちた。


 眼下には忙しなく行き交う人々。

 都会の喧騒をぼんやり眺めつつ、昼休みに備蓄したカップ焼きそばを胃に流し込む。


「社畜歴もついに10年か」


 俺の名前は日比野マサト。

 今日で32歳になる。


 サービス残業に休日出勤(もちろん振休なんてない)の典型的なブラック企業生活で、いよいよ心が限界に達している気がした。

 手鏡なんて持ち歩かないが、もし鏡を見れば、きっと目の下には病的なクマが広がっているだろう。

 今日も2時間くらいしか仮眠できていない。


「なんでこうなったんだろ……ずっと誰かの命令を聞いてるだけの人生って、これって本当に俺のための人生なのか……?」


 寝不足で頭が正常に働いていないのか、妙に哲学的なことを考えながら焼きそばの麺をすする。


 うまい。

 こってりとした特濃ソースが、疲労感しかない体に染みるようだ。


「マジでメシ食ってる時しか生きてる実感がねぇや……」


 やべ、なんかヘンな涙が出てきた。

 絶望の涙がしょっぱすぎる。


「あー、誰でもいい。虫でも動物でもなんでもいいから俺の代わりに働いてくれぇ……」


 涙をこらえるように空を仰いだ。

 憂鬱な俺の気分とは反対に、空はムカつくくらいの晴天だった。


 その時──。


 ──バリバリバリバリィィィッ!!!!


 空から雷が落ちた。


 それは俺に向かって、ド直撃だった。



 ◆ ◆ ◆



「……っ、うぅ……ん?」


 気がつくと、目の前にやわらかい感触があった。


 ……でかいおっぱいである。


「はわわわっ!? 目が覚めましたです!? 生きてるです!?」


「……え? なに……?」


「きゃー! しゃべったですぅぅぅぅ! つまり生きてるっ!! はぅぅ、よかったですぅ~~~~っ!!」


 声の主を見上げると、そこには眩しいくらいの金髪碧眼。

 異様にスタイルの良い美女が俺を涙目で覗き込んでいた。


 俺に抱きつくその美女が柔らかい。

 柔らかすぎて目が覚める。


「だ、誰だお前!?」


「はわっ!? わ、私はですねっ! 天界で地球の天候を担当をしている女神、アミュリィナス=グゥニ・ミスールと申しますぅ!」


 ……なにその名前。

 明らかになんかやらかしてそうじゃん。


「というか、女神?」


「えっへん、そうなのです!(とはいえ実は下級女神ですけど……)」


「ん?なんか言った?」


「い、いいえ! なんでもありませんです!」


 なんか最後の方ゴニョゴニョ言ってた気がするけど……。


「まあ、いいか。というか、ここどこなんだ?」


 俺はなんでこんな雲の上みたいなフワフワした白い空間にいるんだ?


 えーと、最後の記憶は……。


「あっ、そうだ……俺、雷に打たれて……もしかして、死んだ? ここってあの世か?」


「ギ、ギクゥ!!」


 俺の推察に女神があからさまにバツの悪そうなリアクションをとった。


「もしかしてお前……なんか、やらかした?」


 あの時、雲一つない晴天だった。

 なにかがおかしい気がする。


 ……というか目の前の女神が挙動不審であやしすぎる。


「え~と、じ、実はさっきの雷は……えへへ、ちょっとエネルギー不足で、なんというか……天候のコントロールをミスって、うっかり落としちゃいましてぇ……」


「やっぱりお前のせいかよ!!」


「す、すみません~~~~っ! 反省してますぅ~~~~っ!!」


 泣きながら土下座する爆乳女神。

 そのむき出しの背中が哀愁に満ちていた。

 露出の多い服装とあいまって、なんか犯罪的な絵面である。


 というか土下座し慣れてるな、コイツ。


「だからマサト様には選択肢があるです! 普通はこのままあの世に直行なんですけど、今回は私がお詫びのシルシに、マサト様の魂を別の世界へ転移という形で蘇生してあげるです!! そこはとっても平和な世界ですよ!?」


 このまま死ぬか、別の世界でやり直すか、というワケか。


「うーん、どうしよう? まあ、今の世界で生き続けるよりはマシなのかもなぁ」


 それも悪くない気がしてきた。

 社畜人生に未練なんてないからな。


 意外とすんなり受け入れている自分に少し驚いてるけどさ。


「うぅ……普段はこんなミスしないですよ? たまたま、今回はたまたまエネルギーが足りなかっただけなんです……」


 俺が考えている間に女神がなんか言い訳を始めたが、あの土下座の動きは絶対に常習犯である。

 すごいスムーズな動きだったからな。


「はぅぅ……最近、残業つづきでご飯食べる時間がなくて、というか忙しすぎて食料用意するのも忘れてて……」


「おいおい、女神にも残業とかあるのかよ……」


 その時、俺の手元にはまだ温かいカップ焼きそばがあった。

 ご丁寧に割りばしまで刺さってる。


「あー……腹減ってるなら、これ食うか?」


 焼きそばを差し出すと、女神は一瞬で目を輝かせた。

 青い瞳が朝日を反射する海面のようにキラめいて見える。


「えっ!? 良いんですか……って、ダメです! 私は女神なのです! 人間ごときから施しを受けるなんてありえません……!!」


 ぐぅぅぅぅぅ~~~~!!


「は、はぅぅぅぅ……!!」


 女神のプライドが邪魔しているようだが、結局は焼きそばの濃厚な香りの誘惑には女神すら勝てなかった。

 さすが超濃厚ソースの香りだ。


 というかこいつ、今すごくナチュラルに人間を見下してたな?

 さては性格悪いな??


「こ、今回だけですよ!? 特別ですからね!?」


「それ、もらう立場のセリフじゃねぇだろ」


 こいつ、絶対ポンコツキャラだろ。

 と思いながら、なんというか小動物でも保護するような気持ちで女神を見てしまう。


「い、いただきます!」


 ──ずぞぞぞぞぞぞぞっ!!


 いい食べっぷりだった。

 ソースが真っ白な女神の衣に飛ぶのも気にせずにすする。


 マジで腹が減っていたんだろうな。

 しかも残業のせいって、なんか親近感を抱いてしまう……。


「は、はわっ!? こ、こんなものが人間界に!? お、美味しすぎるです……!! こ、これこそまさに、神の恵みですぅ!!」


 ……お前が言うんだ、それ。

 どっちかというと神はお前だろう。


「美味しすぎますぅううううううっ!!!!」


 ポロポロと涙を流しながら焼きそばを貪るポンコツ女神。


 なんというか、かわいそうすぎる。


「うまいだろ? 俺にとっては最後の昼飯だったけど」


「はうっ!? ……そうでした、マサト様!! この恩に報いるためにもう一つサービスするのです!!」


「……サービス?」


 ポンコツ女神に言われるとなんか嫌な予感がするな。


「そうです! もしも新しい世界を望むのなら、マサト様には特別に超最強スキルも授けるのです!! 名付けて……≪それやっといて≫ですぅ!!」


「うわぁ、なんか名前からすごい嫌な予感するんだが」


 ポンコツスキルっぽい。

 絶対ポンコツスキルだろ。


「なんでです!? 安心してください。このスキルを使えば周囲のモンスターを命令通りに働かせることができるです! このスキルさえあれば新世界でのマサト様の人生は勝ったも同然!! 自分は何もせず、指示だけ出して勝つ! 最高です! 労力ゼロで無双ですぅ~~~~っ!!」


「……マジならすごいけど」


「もちろんマジですぅ~~~~っ!!」


 なんか最強の中にこの女神の欲望が含まれてる気がする。

 こいつ、普段から仕事サボってるんじゃないだろうな……?


「使えばわかるです! さぁ、私の女神の力を思い知るですぅ!!」


「わぷっ!?」


 女神は有無を言わさずにドヤ顔で俺に抱き着いてきた。

 爆乳に押しつぶされて息ができない。


「マサト様を私の力で幸せにして見せるです……!!」


 その耳元にやわらかな吐息がかかる。


『今ここに契約を成す。アミュリィナス=グゥニ・ミスールの名のもとに、汝に女神の寵愛を授けん』


 ……次の瞬間、俺の視界は白く消えていった。


 ポンコツ女神のくせに、めちゃくちゃ良い匂いさせやがって。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る